デジタルコンテンツ販売・ファンクラブ型プラットフォームの規約

投稿者が売り、運営者が決済と分配と取締りを担う場では、売上金の扱い、停止時の残高、年齢確認、生成AIの作品の権利を、規約で先に決めます。

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「利用停止になった投稿者の売上金は一切返さない」という条項は、違反の程度と関係なく没収する書き方だと、効力が否定されるおそれがあります。

このページの要点

  • 契約は、購入者と投稿者の売買(使用許諾)、購入者と運営者の利用契約、投稿者と運営者の販売者契約の三本に分けて考え、購入者向けと投稿者向けの条項を混ぜない。
  • 売上金は、確定の時点、締めと出金日、少額の繰越、返金・チャージバックの控除、出金済み分の回収、口座の誤りへの対応まで書く。手数料を返金前の売上に課すか後の売上に課すかで受取額が変わる。
  • 停止時の売上金は、事由を限定して保留し、購入者への返金額や運営者の損害を差し引いて精算する書き方が説明しやすい(消費者契約法8条・10条、民法548条の2第2項)。
  • 成人向けでは、年齢確認と違法コンテンツへの対応を運営の仕組みにする。映像送信型性風俗特殊営業に当たる場合は、風営法の届出と18歳未満の客の排除が問題になる(31条の7・31条の8)。

最初に結論:売主は投稿者、運営者は「場・決済・分配・取締り」を担う。売上金の扱いと年齢確認を先に決める

結論

画像、動画、音声、文章、ソフトなどのデジタルコンテンツを、投稿者が自分で値段を付けて売る場や、月額で会員向けに配信するファンクラブの場を運営するときは、契約の相手を三本に分けて考えます。購入者と投稿者の売買(または使用許諾)、購入者と運営者の利用契約、投稿者と運営者の販売者としての契約です。規約で特に差が出るのは四か所あります。第一に、売上金の締め・出金・返金時の控除。第二に、アカウントを停止または削除したときに売上金を返さないとする条項の書き方。第三に、成人向けコンテンツを扱うときの年齢確認と違法コンテンツへの対応。第四に、外部のメンバーシップ機能や生成AIの作品を扱うときの、権利と責任の切り分けです。

クリエイターが自分の作品や限定コンテンツを売る場は、単純な売買の場ではありません。購入者が払ったお金は、決済会社と運営者を通って、手数料などが引かれたうえで投稿者に届きます。コンテンツは、紙の本と違って、売った後も投稿者の手元にありますし、購入者の端末にもコピーが残ります。しかも、運営者が削除したコンテンツを購入者に見せ続けられるのか、投稿者のアカウントを停止したときの売上金はどうなるのか、といった問題が、現実のトラブルになります。

このページでは、コンテンツ販売とファンクラブ型のプラットフォームを運営する事業者の立場から、契約の構造、売上金、停止時の扱い、成人向けコンテンツ、メンバーシップ、生成AIの順に説明します。運営者が代金を預かる仕組みと資金決済法の関係はマッチング・C2Cプラットフォームの利用規約、販売業者等の情報の開示は取引デジタルプラットフォーム消費者保護法への対応で説明しているので、ここでは重ねて書きません。

契約の構造:誰が誰に何を売るのか

コンテンツ販売のプラットフォームでは、規約を一つにまとめがちですが、契約の相手は三通りです。購入者が見たいのは「この作品をいくらで、どこまで使えるか」で、投稿者が見たいのは「いくら入るか、いつ入るか、何をしたら止められるか」です。この二つを一つの条文に混ぜると、どちらの当事者にも読みにくくなります。

お金とコンテンツの流れ

購入者作品を選び、画面で購入。代金を決済会社に支払う
決済会社カード等の決済を処理し、運営者に代金を引き渡す
運営者代金を受領。返金や不正の確認をし、手数料を差し引く
売上金の管理締め日まで保留。返金分を控除
投稿者本人確認を済ませた口座に、出金日に振込み

利用者・相手方 運営者 外部の事業者・行政 問題になりやすい点

運営者が購入者から代金を受け取って投稿者に渡す設計は、資金決済法の為替取引との関係を確認します。

三つの契約と、規約に書くこと

契約当事者規約に書くこと
購入者への提供(売買または使用許諾)購入者と投稿者。運営者は当事者にならない仕組みが多いコンテンツの利用範囲(私的利用のみ、再配布・転載の禁止)、返金の条件、購入後に提供できなくなったときの扱い
プラットフォームの利用契約(購入者)購入者と運営者会員登録、決済、禁止事項、コンテンツの削除と購入者への影響、アカウントの停止
販売者契約(投稿者)投稿者と運営者手数料、売上金の締めと出金、本人確認、投稿内容の保証、運営者への利用許諾、停止時の売上金

投稿者向けの規約と購入者向けの規約を分けるか、一つの規約に章を分けるかは、サービスの規模で選びます。複数の規約を並べる場合の優先関係は複数のサービス・プランの利用規約をまとめる方法で説明しています。

購入者との関係では、売買と使用許諾のどちらに寄せるかも決めます。画像や動画のデータは、買った人が「所有」するわけではなく、投稿者の著作権は残ります。購入者に認めるのは、私的な視聴や鑑賞、保存、一定の範囲での印刷などの利用であって、転載や再配布、SNSでの公開、第三者への譲渡は禁止する、という形が一般的です。この範囲を、購入ページの説明と規約で一致させます。ページの説明と規約が食い違うと、購入者に「使えると思った」と言われたときに、運営者が説明しにくくなります。

投稿者の側では、販売者として特定商取引法の表示義務を負うことがあります。反復継続して有償で販売していれば、事業として行っていると判断され得るためです。運営者が自分の特商法表記を作ることに加えて、投稿者の表示の場所を用意し、表示の義務を規約に書く二段の構成は、アプリの特定商取引法に基づく表記とマッチング・C2Cプラットフォームの利用規約で説明している考え方と同じです。

売上金:締め・出金・繰越・返金時の控除

投稿者の最大の関心事は売上金です。運営者側から見ても、売上金の条項は、決済会社の仕組み、返金の発生、本人確認、手数料の計算と密接につながります。規約に「月末締め、翌月に振込み」とだけ書くと、次のような場面で止まります。購入者が決済後に返金を求めたとき、売上金から差し引いてよいか。クレジットカードのチャージバック(利用者が決済そのものを取り消すこと)が発生したとき、すでに出金済みの分をどう回収するか。振込先の口座が誤っていたとき、運営者はいつまで再振込を試みるか。少額の残高は、毎月振り込むのか、まとめるのか。

月次の売上金の計算例(数字は例です。手数料率や下限額は、サービスごとに決めます)

  • 手数料を返金前の売上に課す設計売上30,000円 − 手数料20%(6,000円)− 購入者への返金2,000円22,000円
  • 手数料を返金後の売上に課す設計(売上30,000円 − 返金2,000円)× 80%22,400円
  • 振込の下限額が1,000円で、月の残高が800円今月は振り込まず、翌月以降の残高に合算する800円を繰越

返金した分の手数料をどう扱うかで、投稿者の受取額が変わります。どちらの設計かを、規約と手数料表の双方に同じ表現で書きます。

売上金の条項で決めておくこと

  • 売上が確定する時点(購入の決済完了時か、返金の受付期間が過ぎた時か)
  • 締め日と出金日、振込手数料の負担者
  • 振込の下限額と、下回ったときの繰越
  • 出金の条件(本人確認書類の提出、口座名義の一致、提出の期限)
  • 購入者への返金とチャージバックが発生したときの控除、出金済みの分の回収方法
  • 口座の誤りなどで振り込めなかったときの再振込の試みと、連絡が取れない場合の扱い
  • 決済会社の都合や障害で遅れたときの責任の範囲(運営者の故意・重過失は除く)

最後の項目の免責は、消費者契約法8条の範囲で書きます。故意または重大な過失による場合を除く旨を、条項の中に入れておきます。

事務所の書類では

画像・音声・AI生成物の受注と販売を行うC2Cプラットフォームの規約を確認したとき、売上金は決済代行会社を通じて毎月末日締め、翌月に登録口座へ振り込む設計でした。振込は、本人確認書類の提出と、売上金の合計額が一定額以上であることを条件とし、満たさない場合は翌月以降に繰り越す定めで、決済代行会社の都合や口座情報の不備による遅延については、運営者の故意・重過失を除いて責任を負わない旨を置いていました。

このような条項は、運営者が決済代行会社を介して代金を扱う設計では実用的ですが、返金とチャージバックの控除、出金済みの分の回収、振込先の誤りへの対応、手数料の算定基礎が書かれていないと、実際の場面で判断がぶれます。事務所は、売上金の条項を作るときに、上のチェックリストの項目を一つずつ確認します。

アカウントの削除・利用停止と売上金:「返さない」条項の効力

投稿者のアカウントを削除または停止したとき、それまでの売上金を支払わないとする条項は、コンテンツ販売の規約によく見られます。理由は分かりやすく、悪質な投稿者が違法なコンテンツを売り、売上金を持って退会する事態を防ぎたいからです。ただし、書き方によっては、効力が否定されるおそれがあります。

投稿者が個人で、事業として行っていないなら、運営者との契約は消費者契約に当たり、消費者契約法の規律を受けます。趣味の延長で作品を売る個人は、事業として契約をしていると判断されるかどうかが分かれるため、運営者としては、消費者契約として扱われる場合を想定して書くのが安全です。関係する条文は次のとおりです。

売上金の不返還条項に関係する規定

  • 消費者契約法8条1項運営者が債務を履行しなかったときの賠償責任をすべてなくす条項や、責任があるかどうかを運営者が決められる条項は無効
  • 消費者契約法9条1号契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金が、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な損害の額を超える部分は無効。売上金の没収を、解除に伴う違約金として定める場合の問題
  • 消費者契約法10条法令の任意規定より消費者の権利を狭め、負担を重くする条項で、民法1条2項の基本原則(信義誠実の原則)に照らして消費者に一方的に不利益を与えるものは無効
  • 民法548条の2第2項定型約款の条項のうち、相手方の権利を制限し義務を加重するものが、民法1条2項の基本原則(信義誠実の原則)に照らして相手方に一方的に不利益を与えると認められるときは、その条項は合意されなかったものとみなす(取引の態様や実情、社会通念も考慮する)
  • 民法703条法律上の原因なく他人の財産で利益を受けた者は、その利益の存する限度で返還する義務を負う

条文は2026年10月時点の現行規定です。売上金の没収が、違約金なのか、そもそも運営者に債務がないとする整理なのかで、問題になる条文が変わります。

9条1号は「解除に伴う」違約金を対象とするため、退会に伴い売上金を失わせる条項は、これに当たると評価される余地があります。他方で、解除を伴わない規約違反への制裁として売上金を没収する条項は、9条1号ではなく、民法の損害賠償額の予定(420条)と、10条の問題として考えます。いずれにしても、「理由を問わず、すべて返さない」という書き方は、運営者が受け取るべき手数料や、購入者への返金額、違反によって運営者に生じた損害を超えて、投稿者の売上金を没収することになり、効力が否定されるおそれのある書き方です。

停止時の売上金の書き方の三つの型

全部を返さない

理由を問わず売上金を失う

  • 悪質な投稿者への牽制にはなる
  • 違反の程度と無関係に没収するため、効力が否定されやすい
  • 購入者に返金する資金が不足する場合にも対応できない

事由を限定して保留・精算する

違反の内容に応じて保留し、損失を差し引いて残りを払う

  • 違法取引・不正決済・反社会的勢力への関与が確認された場合に、支払を保留できる
  • 購入者への返金額、チャージバックによる損失、運営者の損害を差し引く
  • 調査が終わったら、残額を支払う

原則として精算して払う

退会時も残高を支払う

  • 通常の退会や、軽微な違反による停止は、締め日の通常の手順で支払う
  • 本人確認が済んでいない場合は、完了後に支払う

二つ目の型が、運営者の損失を防ぎつつ、投稿者との関係でも説明しやすい書き方です。

停止・削除時の売上金の定めの改訂例

停止時の売上金

改訂前当社は、アカウントの利用制限等を行った場合、当該利用者が保有していた売上金、保有データ、注文履歴等の保存・復元・返還について一切の義務を負わない。
改訂後当社は、第○条の事由が確認された場合、調査の完了までの間、売上金の支払を保留することができる。当社は、調査の結果、購入者への返金額、決済会社から請求された金額その他当社に生じた損害を売上金から差し引き、残額を支払う。

全部を返さない定めから、保留と精算の定めに替えると、没収の根拠を問われにくい。

反社会的勢力・違法取引

改訂前(定めなし、または全部不返還)
改訂後反社会的勢力に当たると分かった場合、または違法な取引に関わっていたと確認できた場合は、売上金の支払を止め、関係機関の指示または法令に従って処理する。

支払を止める事由を具体的に書き、一般の違反と区別する。

退会時のデータ

改訂前利用契約の終了により、売上情報その他一切の情報は、当社の裁量により削除されることがある。
改訂後売上に関する記録は、法令で保存が必要な期間および精算が終わるまでの間、保存する。

精算前に記録を削除する定めは、紛争の際に運営者自身が困る。

改訂前の欄は、規約の雛形や先方提示の原案によくある定め方です。改訂後は、サービスの規模に合わせて、調査の期間や支払の期限を数字で書き込みます。

購入者との関係にも、同じ問題があります。運営者が違法または規約違反として削除したコンテンツについて、「プラットフォームの判断により非表示・削除された場合も返金しない」と書く規約があります。購入者が代金を払って手に入れた作品を、運営者の判断で見られなくなったのに返金しないという定めは、消費者の権利を制限する条項として、消費者契約法10条の問題になり得ます。削除の理由が投稿者の違反にある場合は、購入者に返金し、その分を投稿者の売上金から差し引く、という整理のほうが、購入者にも説明しやすくなります。

成人向けコンテンツ:年齢確認と違法コンテンツへの対応

成人向けの動画や画像を投稿者が販売するプラットフォームでは、規約に「18歳未満は利用できない」と書くだけでは足りません。年齢を確認する仕組みと、違法なコンテンツを掲載しない仕組みが、規約と運営の双方に必要です。成年年齢は18歳です(民法4条)。年齢確認の基準にする年齢も、18歳に合わせます。

成人向けコンテンツの運営で関係する主な規定

  • 刑法175条わいせつな電磁的記録を電気通信の送信により頒布した者は、2年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金もしくは科料に処し、または拘禁刑と罰金を併科する
  • 児童買春・児童ポルノ禁止法7条児童ポルノを提供した者は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。不特定または多数の者に提供し、または公然と陳列した者は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはこれを併科する
  • 風営法2条8項専ら性的好奇心をそそるため、性的な行為を表す場面や衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に映像を伝達するものを、映像送信型性風俗特殊営業という
  • 風営法31条の7映像送信型性風俗特殊営業を営もうとする者は、事務所の所在地を管轄する公安委員会に届出書を提出する。映像の伝達に使う設備を他の者が設置する場合は、その設置者の氏名なども記載する
  • 風営法31条の8第2項・第4項18歳未満の者を客としてはならない。客が18歳以上である旨の証明、または18歳未満の者が通常利用できない方法で料金を支払う旨の同意を客から受けた後でなければ、映像を伝達してはならない

サービスが映像送信型性風俗特殊営業に当たるかは、扱う映像の内容と営業の実態によって決まります。届出の要否は、事務所の所在地を管轄する公安委員会に確認することができます。

映像送信型性風俗特殊営業の規制が運営者自身にかかるのか、投稿者が営業者で運営者は設備を提供する側なのかは、サービスの仕組み(誰が価格を決め、誰が購入者と契約するか、運営者が審査と配信をどこまで行うか)によって評価が分かれます。規約を作る段階で、この点を一つずつ確認し、運営者が行わない事項は規約に書かない、行う事項は規約と運営体制で裏付ける、という整理にします。

年齢確認と投稿者確認の流れの例

  1. 購入者の登録登録時に18歳以上である旨の申告と、運営者が定める方法による年齢確認を求める。未成年者に当たると判明した場合の措置を規約に置く
  2. 投稿者の登録氏名、生年月日、住所、口座名義を確認できる公的書類の提出を受ける。審査を通過するまで販売を始められない設計にする
  3. 出演者の確認投稿者以外の人が出演する動画や画像では、出演者の年齢と、販売への同意を確認できる資料を投稿者に提出させ、運営者が保管する
  4. 投稿内容の審査公開前または公開後の速やかな時点で、運営者が内容を確認する。違法なコンテンツの基準を、投稿者向けのガイドラインで具体的に示す
  5. 通報と削除利用者や被写体からの通報窓口を置き、違法または権利侵害の疑いがあるときは、非公開にする。手順は投稿の削除依頼と発信者情報開示への備えに沿って組む
  6. 再登録の制限違法なコンテンツの投稿でアカウントを停止した者について、別名義での再登録を防ぐ措置を、規約と運営の両面で用意する

決済会社には、扱うコンテンツの種類や年齢確認の方法に関する独自の基準があります。決済会社の審査で確認される事項も、規約の作成の段階で調べておきます。

画面の見本:購入前の年齢確認の画面

年齢の確認

このコンテンツは18歳以上の方のみご覧いただけます。

私は18歳以上です

利用規約とコンテンツ購入のルールに同意します

年齢を確認して進む

年齢確認の方法は、サービスの案内に従ってください。

申告のチェックだけでなく、サービスが定める方法で年齢の証明を受ける設計にします。画面と規約の記載を一致させます。

事務所の書類では

18歳以上限定の動画・画像の投稿販売サービスの規約・プライバシーポリシーを確認したとき、規約には、18歳未満の利用を禁止する条、年齢または本人確認のための公的証明書の提出を求める条、コンテンツの審査・削除とアカウント制限の条、再登録の制限の条が置かれていました。論点として、購入者にとっての返金不可条項の効力、投稿者の売上金から手数料を差し引いて支払う収納代行の構成、年齢確認と違法コンテンツへの対応の具体化を挙げました。

年齢に関する条文を整える際は、登録に関する条項どうしの整合を確認します。例えば、一方の条で「18歳未満の利用を一切認めない」と定めながら、別の条で「未成年者が親権者の同意を得れば利用できる」という一般的な未成年者の条項が残っていると、18歳未満は利用できないという趣旨が弱まります。事務所の書類では、年齢に関する条項を一か所の基準に統一します。

ファンクラブ・メンバーシップ型:会員向けの限定コンテンツと、外部プラットフォームの規約

クリエイターが、記事の投稿サービスや動画の配信サービスなど外部のプラットフォームが提供するメンバーシップ機能を使って、会員にツール、限定記事、動画、コミュニティを提供する形があります。この形では、会費の決済、解約、返金、会員情報の管理を外部のプラットフォームが担い、クリエイターは内容の提供に専念します。そのため、クリエイター自身の規約は不要と考えられがちですが、外部のプラットフォームの規約が決めていない事項を、クリエイターが自分の規約で定めておく必要があります。

外部プラットフォームの規約と、自分の規約の役割分担

事項外部プラットフォームの仕組みで決まることが多い自分の規約で決めること
決済・解約会費の決済方法、解約の手続、決済の取消し解約後の閲覧、会員資格の喪失時期、ツールやパスワードの利用停止の時期
返金返金の可否や手続(外部の規約によって変わる)自分の責めに帰すべき事由があるときの返金の考え方。外部の規約に従う旨と、それと別に返す場合の条件
コンテンツの利用著作権の基本的な扱い利用範囲(自己利用のみ)、録画・転載の禁止、第三者への譲渡や貸与の禁止
会員の資格会員であるか否かの識別利用区分(サークル内限定、ネット公開など)、利用実態の確認、強制退会の事由
個人情報外部が取得する決済・会員情報自分が取得する情報の範囲(取得しない情報の明示を含む)と、利用目的

外部の規約は変更されることがあり、内容を運営者が管理できません。自分の規約には、外部の規約が適用される場面があることと、外部の規約が変更された場合の扱いを書いておきます。

事務所が確認したメンバーシップ型の規約には、サークルや家族、地域団体など限定された構成員の範囲でだけ使えるプランと、インターネット上で不特定多数に公開できるプランを分け、公開範囲と料金に差を付けるものがありました。このような利用区分を設けるときは、区分の定義、区分に反する利用があったときの措置、利用実態を確認する権限をそろえます。区分の定義が曖昧だと、「サークル」の範囲をめぐって争いになります。サークルに当たる団体の例を列挙し、インターネット上で不特定多数が閲覧できる状態にする場合には別の区分の利用が必要だと明記します。

メンバーシップ型の規約の改訂例

強制退会と会費

改訂前強制退会となった場合、支払済みの会費は返金しない。
改訂後利用区分違反など、運営者側の判断で強制退会とした場合は、当月分の会費を返金する。その他の理由による場合は、法令上義務付けられるときを除き返金しない。

運営者の判断で退会させる場合まで返金しないと、会費の対価がない期間が生じる。

認証情報

改訂前利用者は認証情報を適切に管理する。
改訂後月次のパスワードなどの認証情報を、第三者に開示、共有、譲渡または貸与してはならない。漏えいによる損害について、運営者は責任を負わない。

共有を禁止する対象と、運営者の責任の範囲を分けて書く。

コミュニティ

改訂前運営者は、不適切な投稿を削除できる。
改訂後運営者は、コミュニティ内の投稿を監視する義務を負わない。不適切と判断した投稿は、事前の通知なく削除できる。

監視義務を負わないことと、削除権限を別の文で書く。

改訂前の欄は、依頼者が用意した規約の原案によくある定め方です。

会員向けの限定コンテンツを、月額で提供するファンクラブでは、特定商取引法の通信販売の表示、定期購入の最終確認画面、自動更新と解約の方法も関係します。これらはアプリの特定商取引法に基づく表記と、課金・サブスクの規約と同じ考え方で整理できます。複数の会員プランを一つの規約にまとめるときの優先関係は、複数のサービス・プランの利用規約をまとめる方法で説明しています。

生成AIで作った画像・音声を売る場合の規約

生成AIで作った画像や音声が、デジタルコンテンツとして出品されることが増えています。運営者が整えておく規約は、権利の帰属、他人の権利の侵害への責任分担、AI生成であることの表示の三点です。

文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は、2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、AI生成物が著作物に当たるかは、個々の生成物について個別具体的な事情に応じて判断されると整理しました。判断の要素として、指示・入力(プロンプト)の分量と内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択、人間が加えた加筆や修正が挙げられています。つまり、AI生成物であるというだけで著作権が成立するとも、しないとも決まりません。規約では、「著作権は投稿者に帰属する」と一律に書くのではなく、「投稿者が権利を有する範囲で」「著作物に当たらない場合は、利用条件を定める」といった書き方にしておくほうが、実態に合います。

他人の権利の侵害は、同じ文化庁の整理で、依拠性(既存の著作物を知っていて、創作的表現が共通する生成物を生成させたか)が問題になります。投稿者が、他人の作品に似た画像を意図して生成させて販売すれば、侵害になり得ます。運営者は、投稿者に次の事項を保証させます。

  • 第三者の著作権、肖像、プライバシー、パブリシティなどの権利を侵害しないこと
  • 特定の実在の人物の顔や声を、本人の同意なく似せて生成したものではないこと
  • 利用した生成AIサービスの利用規約が、商用利用や販売を認めていること
  • 生成に使ったプロンプトや設定などの記録を、運営者から求められたときに提示できるようにしておくこと

文化庁が2024年7月31日に公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、依拠性に関するリスクを下げるための取組として、生成に用いたプロンプトなどの記録を確認できるようにしておくことを挙げています。規約に投稿者の記録保存の努力義務を置くことは、この考え方にも沿います。

運営者自身が、販売されているコンテンツを、AIの学習に使うかどうかも決めておきます。著作権法30条の4は、著作物に表現された思想や感情を享受することを目的としない利用(情報解析など)を、必要と認められる限度で認めていますが、ただし書で、著作権者の利益を不当に害することとなる場合を除いています。規約の利用許諾の条項で、運営者に認める範囲を「サービスの提供、運営、宣伝」に限るのか、「サービスの改善」としてAI学習も含めるのかを、投稿者に分かる文言で書き分けます。投稿者に無断でAI学習に使うと、投稿者の信頼を失い、作品の引き上げにつながります。AIサービスの利用規約全般はAIサービス・APIの利用規約で決めておくことで説明しています。

AI生成物の表示も、購入者への説明として必要です。生成AIで作った作品か、人が描いた作品かは、購入者の判断に影響する事項です。AI生成であるかどうかを、投稿者が出品時に選択して表示する機能を設け、虚偽の申告を禁止事項にします。この表示があれば、後で購入者から「人が作ったと思った」と言われたときにも、出品時の表示を示して説明できます。

起きがちなこと

よくあるご質問

投稿者への売上金を、手数料と一緒に運営者が差し引いて払う仕組みは、規約にどう書きますか。

手数料の率または計算方法、算定の基礎(返金前の売上か、返金後の売上か)、締め日と出金日、振込手数料の負担者、振込の下限額と繰越、出金の条件(本人確認書類の提出と口座名義の一致)を書きます。購入者から代金を預かって投稿者に渡す設計は、資金決済法との関係を別に確認します。

違法なコンテンツを投稿した人の売上金は、没収できますか。

違反の内容によらずすべてを没収する書き方は、消費者契約法10条や民法548条の2第2項の問題になり、効力が否定されるおそれがあります。違法取引への関与が確認された場合に支払を保留し、購入者への返金額や運営者に生じた損害を差し引いて、残りを精算する、という書き方が、説明しやすい形です。

成人向けコンテンツを扱うとき、利用規約に「18歳未満禁止」と書けば足りますか。

足りません。成年年齢は18歳(民法4条)で、年齢を確認する仕組みが必要です。映像を電気通信設備で見せる営業が風営法の映像送信型性風俗特殊営業に当たる場合、18歳未満の者を客としてはならず(31条の8第2項)、年齢の証明などを受けた後でなければ映像を伝達してはならない(同条4項)と定められています。届出(31条の7)の要否も、営業の実態で決まります。

生成AIで作った画像を販売させるとき、著作権の帰属はどう書けばよいですか。

AI生成物が著作物に当たるかは、プロンプトの内容、試行回数、人が加えた加筆や修正などを踏まえて、個別に判断されます(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」)。「投稿者が権利を有する範囲で」という書き方にし、権利を有しないものや著作物に当たらないものについては、利用条件を規約で定めます。

外部のメンバーシップ機能で会員に配信するだけなら、規約はなくてもよいですか。

決済や解約は外部の仕組みで処理されますが、利用範囲、認証情報の管理、録画や転載の禁止、強制退会の事由と退会後の扱い、返金の考え方は、外部の仕組みが決めていないことがあります。それらを自分の規約で定めておくと、トラブルの際に拠り所になります。

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