マッチング・C2Cプラットフォームの利用規約

利用者どうしが取引する場を提供するサービスでは、運営者は「当事者ではない」と同時に「場を設計した者」でもあります。その両方を規約に書き分けます。

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「利用者間のトラブルに当社は一切関与しません」と書いても、場の運営者としての責任まで消えるわけではありません。

このページの要点

  • プラットフォームの規約は、運営者と利用者の契約(利用契約)と、利用者どうしの契約(取引)の二層で整理する。どの約束がどちらの契約に属するかを書き分ける。
  • 利用者間の取引に関与しない旨の条項は有効でも、運営者自身の故意・重過失や、場の設計・運営上の義務違反まで免責するものは、消費者との関係では無効になり得る(消費者契約法8条)。
  • 運営者が代金を受け取って出品者に渡すなら、資金決済法2条の2(令和8年6月1日施行)と内閣府令に当てはめ、為替取引に当たらない設計かを確認する。出品者が事業者でない個人の場合や海外の出品者がいる場合は特に注意する。
  • 出品者・提供者に事業者が含まれるなら、その事業者は特定商取引法の表示義務を負う。プラットフォームとして表示の場所を用意する。
スキルシェア、家事や作業の代行、ハンドメイド作品の売買、講座の販売。利用者どうしが取引する場を提供するサービスでは、運営者は取引の当事者ではありません。その一方で、運営者は場を設計し、手数料を受け取り、問題のある利用者を止める立場にもあります。プラットフォームの規約は、「当事者ではない」ことと「場の運営者としての責任」の両方を、正確に書き分けることから始まります。

契約は二層になっている

マッチングやC2Cのサービスには、二つの契約があります。一つは、運営者と各利用者の間の利用契約です。もう一つは、出品者と購入者(提供者と依頼者)の間で結ばれる個々の取引の契約です。規約を書くときは、どの約束がどちらの契約に属するのかを意識します。

二層の契約と、規約で決めること
契約当事者規約で決めること
利用契約運営者と各利用者登録と本人確認、手数料、禁止事項、停止と退会、評価機能、運営者の責任の範囲、紛争への関与の仕方
取引の契約出品者と購入者成立の時点、代金と支払、キャンセル、提供の完了、返品・返金。運営者は当事者ではないが、規約やガイドラインで基本的なルールを定める

出品者に事業者(販売業者・役務提供事業者)が含まれ、消費者がプラットフォームの画面から通信販売の申込みをできる仕組みであれば、「取引デジタルプラットフォーム」として、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の対象になります(同法2条1項)。この場合、運営者には、消費者が出品者と円滑に連絡できるようにする措置、表示についての苦情を受けたときの調査などの措置、出品者に所在に関する情報の提供を求める措置を講じる努力義務があります(同法3条1項)。また、消費者は、一定額を超える代金の返還などの請求のために、運営者に出品者の氏名・住所などの開示を請求できます(同法5条)。開示の請求に応じるには、運営者が出品者の氏名や住所を取得して保管していることが前提になります。

「利用者間の取引に関与しない」条項の限界

規約に「利用者間のトラブルについて、当社は一切関与せず、責任を負いません」と書く例は多くあります。運営者が取引の当事者でないことを示す条項自体は有効ですが、それで場の運営者としての責任まで消えるわけではありません。インターネットオークションの利用者が運営会社を訴えた事件で、裁判所は、運営者は利用契約の信義則上、欠陥のないシステムを構築してサービスを提供する義務を負うとしました(名古屋地方裁判所平成20年3月28日判決。その事案では義務違反は否定)。本人確認、出品の審査、問題のある出品の削除、苦情への対応、情報の開示といった、不正や被害を防ぐ合理的な仕組みを整えることが前提になります。

また、運営者の名前やブランドで出品者が販売しているように見える表示をしていると、購入者から売主と同じような責任を問われるおそれもあります。売主は各出品者であって運営者ではないことを、規約と各商品・サービスのページで明確に示しておきます。

事務所が提案している責任の三層の書き方

  1. 第1層:取引の当事者ではない

    運営者は出品者と購入者の間の契約の当事者ではなく、その履行について原則として責任を負わないことを書きます。

  2. 第2層:サービスの提供に原因がある場合は責任を負う

    サービスの提供そのものに運営者の責めに帰すべき事由がある場合は責任を負い、上限は、その取引で受け取った手数料の額など客観的な基準に結び付けます。

  3. 第3層:故意・重過失は上限の対象外

    上限は、運営者の故意又は重大な過失による場合には適用しないことを、上限の条項の中に書きます。生命・身体の侵害による損害も、上限の対象から外しておきます。

出品・掲載できないものの線引き

免許や資格が必要な業務は、出品者が資格を持っていても、運営者が事後に資格を確認し続けるのは難しいため、カテゴリごと出品を禁止する設計をおすすめしています。

出品を禁止するカテゴリの例
カテゴリ関係する法律
医療行為、医業類似行為医師法17条、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律1条・12条
士業の独占業務弁護士法72条、税理士法52条、行政書士法19条、司法書士法73条
宅地建物の売買・賃貸の媒介宅地建物取引業法12条
金銭の貸付け、投資の助言貸金業法11条、金融商品取引法29条
有償の旅客の運送(自家用車によるものを含む)道路運送法4条・78条
医薬品の販売医薬品医療機器等法24条

乳幼児の預かりのように、一律に禁止するのではなく、出品を認めるなら個別の条項を設計すべきカテゴリもあります。ベビーシッターのマッチングについては、国のガイドラインが、マッチングサイトの利用規約に定めるべき事項(事前の面接、身分証明書の提示、資格証の提示、賠償責任保険など)を示しています。

禁止行為と、アカウント停止の基準

  • プラットフォーム外の取引:連絡先を交換して直接代金をやり取りされると、手数料を受け取れないだけでなく、決済・補償・本人確認の保護の外で取引が行われます。
  • 虚偽の表示:なりすまし、経歴・スキル・実績の偽り。
  • 評価の不正操作:自作自演の評価、報酬と引き換えの評価の依頼、嫌がらせの低評価。広告であることを隠した表示は、景品表示法のいわゆるステルスマーケティングの規制にも関わります。
  • 多重アカウント、第三者への貸与。
  • ハラスメント、つきまとい、対面の場での合意を超える要求。
  • 反社会的勢力の利用:属性の表明保証、禁止行為、催告なしの解除の三つをそろえます。

停止の基準は、「当社が合理的に判断した場合」という白地の条項にせず、即時に停止する事由(禁止された出品、反社会的勢力、他の利用者の生命・身体・財産への危害など)と、催告したうえで停止する事由(緊急性のない違反の疑い、手数料の未払いなど)に分けます。停止の措置について説明を求める窓口も設けます。

ご相談でよく聞かれること:停止の運用基準

Q停止の詳しい基準を、利用者向けの個別のルールとして公開したほうがよいですか。

Aスキルシェアのサービスの案件では、停止の詳しい基準は運営者の内部の運用基準として定め、規約には「内部の運用基準に従って運用する」と書く形にしました。利用者向けの個別のルールにすると、規約の「個別のルールが優先する」という条項によって、運営者を拘束する規程になり、運用の柔軟性を失うからです。

Q警察から照会があった、報道された、という段階で停止してよいですか。

A照会や報道は調査のきっかけにすぎず、それだけで停止の事由を確認したことにはならない、と整理しました。緊急性は、停止の事由そのものではなく、即時に措置する場面の要件として位置づけています。

代金を預かるなら、資金決済法との関係を整理する

購入者から代金を受け取り、手数料を差し引いて出品者に支払う仕組みは、資金決済法の「資金移動業」との関係が問題になります。資金移動業の登録なく為替取引を業として行うことは禁止されています。

令和7年の改正(令和8年6月1日施行)で、受取人から委託を受けて債務者から弁済として資金を受け入れ、受取人に引き渡す行為のうち、受取人が事業者でない個人であって内閣府令で定める要件に当たるものや、国境をまたいで資金を移動させるものは、為替取引に当たるとされました(資金決済法2条の2)。内閣府令では、購入者から代金を受け入れた時点で購入者の債務が消滅しないものなどが対象とされています。出品者に事業者でない個人が含まれるC2Cでは、購入者が運営者に支払った時点で購入者の債務が消滅する設計にしたうえで、内閣府令の各要件に当てはめて確認します。海外の出品者がいる場合は、同条2号の検討も必要です。

  • 購入者が運営者に支払った時点で、購入者の出品者に対する代金の支払義務が消滅する(出品者への支払が完了したものとみなす)旨を規約に書きます。
  • 預かった代金の分別の管理、滞留の最小化、出品者への支払のサイクルを明確にします。
  • 返金やチャージバックが起きたときに、出品者に支払う予定の売上金から差し引くなど、資金の戻し方を決めます。
  • 決済代行サービスの分配の機能を使う場合は、資金を保有する主体や出金の時期が、アカウントの類型や実装の方式によって異なります。類型を確定してから規約を書きます。
  • 将来、ウォレットの残高にチャージする機能を加えると、前払式支払手段の規制の対象になり得ます。

事務所の改訂例:売上金と返品・返金(依頼者との協議を踏まえた改訂)

売上金の支払ができない場合
改訂前登録口座の誤りその他の理由で売上金を支払えない場合、当社は責任を負いません。改訂後当社は、登録口座の誤り等により売上金を支払えない場合、合理的な期間内に再度の振込みを試みます。出品者が長期間にわたり当社からの連絡に応じない場合、当社は支払の義務を免れます。反社会的勢力又は違法な取引への関与が判明した場合は、売上金の支払を停止することがあります。誤って重複して支払った場合は、出品者はこれを返還するものとします。
売上金をめぐる争いと、運用上の事故への備えとして、場面ごとの扱いを具体的にしました。手数料や支払条件を定めるガイドラインを変更するときは、事前に通知することも加えました。
返品・返金のトラブル
改訂前当社は、返品・返金に関するトラブルに介入する義務を負いません。改訂後当社は、介入する義務を負いませんが、当事者間の協議が調わず、当社が必要と判断した場合に限り、取引の記録等に基づき合理的な裁定を行うことがあります。虚偽の申告又は不当な返品の試みに対しては、アカウントの停止、売上金の保留その他の措置をとることがあります。
出品者に返品の条件を明示する義務を課し、明示がない場合の扱いも決めました。苦情への対応の仕組みとしても機能します。

キャンセル料と、取引の完了

出品者が事業者で、購入者が個人の場合、解除に伴う損害賠償の予定や違約金を定めるときは、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。キャンセル料を一律に代金の全額とすると、平均的な損害を説明できず無効とされるリスクが高くなります。提供の何時間前のキャンセルかに応じて料率を段階的にし、直前ほど他の予約を受ける機会を失う可能性が高いことを、算定の根拠として規約やポリシーに書いておきます。購入者都合のキャンセルで手数料を返すのか、出品者都合なら手数料も全額返すのか、もあわせて決めます。

提供の予定時刻から一定時間が経過したら取引を自動で完了させ、出品者の売上に計上する設計では、次の点を詰める必要がありました。実施の日時が決まっていない取引は自動完了の対象外とすること、購入者が問題を報告していれば完了しないこと、報告を受けた後に運営者がどう判断し、いつ完了とするか、無断のキャンセルをシステムが自動で判別するのか出品者の申告によるのか、です。

作業の代行型のサービスと、雇用との境界

購入者の指示のもとで、出品者が継続的に作業を提供する形のサービスでは、購入者が出品者を実質的に指揮命令する関係になると、運営者が無許可の職業紹介(職業安定法30条)や労働者供給事業(同法44条)を行っていると評価されるおそれや、出品者が労働者に当たるかどうかという問題が生じます。規約では、出品者が独立した事業者として役務を提供すること、購入者は作業の手順や時間を指揮命令しないこと、出品者が日時の調整などに裁量を持つことを書きます。ただし、規約の文言だけで評価が決まるわけではなく、実際の運用が問われます。

特定商取引法の表示は、二層で考える

運営者は、手数料を対価とするプラットフォームの利用について、自らの特定商取引法に基づく表記を作ります。個々の出品については、出品者が反復継続して有償で販売し、事業として行っていれば、出品者自身が表示の義務を負います。規約で出品者の表示の義務を定め、プラットフォームとして表示の場所を用意したうえで、購入者からの開示の請求には取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の手続で対応する、という二段構えにします。

ご相談でよく聞かれること:販売の主体を変えるとき

Q講座の販売サイトを、講師が自分で講座を出品して販売するマーケットプレイス型に変えたいと考えています。講師との業務委託契約は不要になりますか。

A運営者が講師に業務を委託しない形になるので、講師向けの利用規約への同意で足り、フリーランス法の取引条件の明示の義務も原則としてかからなくなります。その代わり、各講師の特商法表記(氏名・住所・電話番号)、代金の受け取り方と資金決済法、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法への対応が新たに必要になります。問題が消えるのではなく、入れ替わると考えてください。講師に住所や電話番号の表示を求めにくいなら、ここが採否の分かれ目になります。

利用者どうしが対面で会うサービスでは、規約に加えて、利用者向けのコミュニティガイドラインと安全ガイドライン、運営者向けのトラブル対応マニュアルとアカウント停止の運用基準、出品者向けのガイドを作成することもあります。規約全体の作り方は利用規約の作り方のページ、取引の相手方に連絡先を伝える場合の個人情報の整理は第三者提供のページ、手数料の課金の表示は特商法表記と課金のページで扱っています。

公開前のチェック:マッチング・C2C

  • 利用契約と取引の契約を分け、どの約束がどちらに属するかを書き分けた
  • 取引デジタルプラットフォームに当たるかを確認し、出品者の情報を取得・保管する仕組みを作った
  • 責任を三層で書き、上限を客観的な基準に結び付け、故意・重過失を除外した
  • 免許・資格が必要な業務を、カテゴリごと出品禁止にした
  • 停止の事由を、即時停止と催告後の停止に分けた
  • 代金の受け取り方を確定し、収納代行の要件を規約に書いた
  • キャンセル料を段階的にし、算定の根拠を書いた
  • 売主が出品者であることを、規約と各ページで表示した

よくあるご質問

マッチングサービスの運営者は、利用者間のトラブルに責任を負いますか?

運営者は取引の当事者ではないため、取引の履行について原則として責任を負いません。ただし、利用契約上、欠陥のないシステムを構築してサービスを提供する義務を負うとした裁判例があり、本人確認、審査、削除、苦情への対応などの仕組みを整えることが前提になります。

「利用者間のトラブルに当社は一切関与しません」と書けば、責任を免れますか?

運営者が当事者でないことを示す条項は有効ですが、運営者自身のサービスの提供に原因がある場合の責任や、故意・重過失による責任まで免れることはできません。個人の利用者との関係では、全部免責は消費者契約法8条で無効です。

C2Cサービスで代金を預かるには、資金移動業の登録が必要ですか?

令和7年の資金決済法の改正(令和8年6月1日施行)で、受取人が事業者でない個人の場合の一部や、国境をまたぐ場合の収納代行が為替取引に当たるとされました。購入者が運営者に支払った時点で購入者の債務が消滅する設計にしたうえで、出品者が個人か事業者か、海外の出品者がいるかを含めて、内閣府令の要件に当てはめて判断します。

出品者にも特定商取引法に基づく表記が必要ですか?

出品者が反復継続して有償で販売し、事業として行っていれば、出品者自身が表示の義務を負います。プラットフォームの規約で表示の義務を定め、表示する場所を用意します。運営者は、プラットフォームの利用について自らの表記を作ります。

キャンセル料は、代金の100%にしてもよいですか?

出品者が事業者で購入者が個人の取引では、平均的な損害を超えるキャンセル料は無効です(消費者契約法9条1項1号)。一律に全額とするより、提供の何時間前かに応じて段階的な料率にし、算定の根拠を示しておくほうが安全です。

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