このページの要点
- 分配の基礎となる売上を定義する。ストアや決済の手数料、返金・チャージバック、消費税、広告費を差し引くかどうかを一つずつ決める。
- 売上の報告の時期と方法、根拠資料の閲覧・監査の権利を定める。分配する側だけが数字を持つ契約にしない。
- 開発費の一部を受け取る型、最低保証額を置く型など、分配だけに頼らない組み合わせを検討する。
- サービスを終了・売却するとき、契約期間が満了したときに、分配がいつまで続くか、ソースコードや顧客データがどちらに残るかを決める。
レベニューシェアの主な型
| 型 | 内容 | 決めること |
|---|---|---|
| 開発型 | 開発会社が開発費の全部又は一部を受け取らず、公開後の売上から分配を受ける | 分配の期間、開発費の一部の受取、最低保証、保守の範囲、ソースコードの帰属 |
| 共同事業型 | 企画・運営・開発を分担し、売上を分け合う | 役割と費用の分担、意思決定の方法、撤退・売却の扱い |
| 許諾型 | 原作・キャラクター・データの利用を許諾し、売上から使用料の分配を受ける | 許諾の範囲、分配の期間、満了後の販売継続 |
| 紹介型 | 顧客を紹介し、紹介した顧客の売上に応じて紹介料を受け取る | 紹介の帰属の判定、返金時の扱い、広告の表示 |
分配の基礎となる「売上」を定義する
レベニューシェアの契約で最も重要なのが、分配の基礎となる売上の定義です。「売上」「利益」「分配対象の収益」という言葉が契約書の中で混在していると、それだけで争いの種になります。定義の条で一つの言葉に固定し、次の項目を一つずつ決めます。
分配の基礎から差し引くかどうか
| 項目 | 差し引く例 | 差し引かない例 | 決めておくこと |
|---|---|---|---|
| アプリストア・決済の手数料 | ○ | - | ストアの手数料率の変更があった場合の扱い |
| 返金・チャージバック | ○ | - | 分配後に返金があった場合の精算(次回の分配から差し引くなど) |
| 消費税 | ○ | - | 税込・税抜のどちらで計算するか |
| 広告費・販売促進費 | △ | △ | 差し引くなら、上限と、相手方の承認の要否 |
| サーバー費・外部サービスの利用料 | △ | △ | 差し引くなら、対象と計算方法 |
○は差し引くのが一般的なもの、△は契約ごとに判断が分かれるものです。
たとえば「売上の30%を分配する」と書いた場合、ストアの手数料や返金を差し引く前の金額か後の金額かで、受け取る額は大きく変わります。分配する側だけが数字を持つ構造になりやすいので、分配を受ける側の立場では、売上の報告の時期と方法、根拠資料を閲覧・確認する権利(監査の権利)を必ず入れます。
条文の書き方の例 (分配対象売上の定義と報告)
- 本契約において「分配対象売上」とは、本アプリの有料プラン及びアプリ内課金により甲が受領した金額から、アプリストアの運営者及び決済代行事業者の手数料、利用者への返金額並びに消費税等相当額を控除した金額をいいます。
- 甲は、毎月末日締めで当月の分配対象売上を集計し、翌月◯日までに、計算の根拠となる資料を添えて乙に報告します。
- 乙は、甲に対し、合理的な範囲で、前項の資料の根拠となる記録の閲覧を求めることができます。
- 分配金の支払後に返金その他の理由により分配対象売上が減少した場合、甲は、その減少額に対応する分配金を、翌月以降の分配金から控除することができます。
「◯日」には具体的な日を入れます。分配金を受け取る側が個人の場合は、税務の取扱いも確認しておきます。
分配だけに頼らない組み合わせ
開発型のレベニューシェアでは、売上が立たなければ、開発会社は開発の費用を回収できません。分配だけに頼るのではなく、開発費の一部を受け取る、一定期間の最低保証額を置く、保守の費用は別に受け取る、といった組み合わせを検討します。発注する側から見ても、最低保証のない分配だけの契約では、相手方が保守や改修に十分な体制を割かないおそれがあります。
分配を受ける側の立場では、相手方が事業を続ける意思を失った場合や、売上を意図的に別の事業に付け替えた場合の手当ても必要です。条件の成就によって不利益を受ける当事者が故意にその成就を妨げた場合は、相手方は条件が成就したものとみなすことができる(民法130条1項)という規定もありますが、売上の付け替えや類似のサービスへの誘導を禁止する条項を、契約で具体的に置いておくほうが確実です。
知的財産の帰属と、終了の後の扱い
開発型では、開発したアプリのソースコードの著作権が、開発会社と事業者のどちらに帰属するかを決めます。開発会社に残す場合は、事業者に利用の許諾を与え、契約が終了した後の扱い(事業者が引き続き使えるのか、買い取れるのか)を決めます。事業者に移す場合は、分配の期間中は分配を受ける権利が続くことと、移転の時期を決めます。
事務所の改訂例:許諾型のレベニューシェア(依頼者原案からの改訂)
| 契約の期間と分配の期間 | |
|---|---|
| 改訂前本契約の有効期間は、作品の発売日から◯年間とします。 | 改訂後本契約は締結日から効力を生じます。分配の期間は、作品の発売日から◯年間とし、自動更新はしません。 |
| 発売日から効力が生じるとすると、制作の期間が契約の対象から外れてしまいます。契約の効力と分配の期間を分けました。相手方に販売開始日を通知する義務も加えました。 | |
| 満了後の扱い | |
| 改訂前(定めなし) | 改訂後分配の期間の満了後は、完成済みの作品に限り、乙は甲に対し、無償かつ期間の定めなく販売を継続することを許諾します。ただし、甲の契約違反により本契約が解除された場合は、販売を停止するものとします。 |
| 満了(販売の継続は可)と、違反による解除(販売を停止)を書き分けました。許諾であって著作権の移転ではないことも明記しています。 | |
| 違約金 | |
| 改訂前無断で利用した場合は、使用料の3倍の違約金を支払う。 | 改訂後無断で利用した場合は、無断利用の期間の分配対象売上に分配率を乗じた額の3倍を違約金として支払う。算定が困難な場合は、直近の一定期間の分配金の累計額の3倍とする。 |
| 一時金から売上分配に変えると、「使用料」の額が決まらず、違約金を計算できなくなります。算定の方法を具体的にしました。 | |
契約が終了する場面は、期間の満了、一方の違反による解除、サービスの終了、事業の売却など、いくつもあります。それぞれの場面で、分配がいつまで続くか、ソースコードや顧客データがどちらに残るか、利用者への告知を誰が行うかを決めておきます。共同事業型では、撤退する当事者の持分や、事業を第三者に売却する場合の分配も決めておきます。
紹介型のレベニューシェアで見落としやすい点
- 返金があった場合の紹介料:紹介した顧客がクーリング・オフや中途解約で返金を受けた場合に、支払済みの紹介料を返してもらう(クローバック)定めがないことがあります。
- 分割払いの顧客:顧客が分割で支払う場合に、総額を基準に紹介料を先に支払うと、未回収のリスクを紹介を受けた側が負います。
- 紹介の帰属:複数の経路から同じ顧客が来た場合に、誰の紹介とするかの判定のルールを決めます。
- 広告の表示:紹介者がSNSなどで紹介する場合、広告であることを隠した表示は、景品表示法のいわゆるステルスマーケティングの規制の問題になり、広告主の責任が問われます。
- 成約した顧客の情報:紹介者に成約した顧客の氏名などを報告すると、個人データの第三者提供に当たることがあります(第三者提供のページ)。
業務委託や共同事業との違い
レベニューシェアの契約でも、一方が他方のために開発や作業を行う部分は、業務委託の性質を持ちます。相手方が個人のエンジニアやクリエイターであれば、追加の作業を依頼する部分について、フリーランス法の取引条件の明示や支払期日のルールがかかることがあります(開発委託契約のページ)。一方、売上の分配の対価が何に対するものなのか(開発の対価か、著作物の利用の対価か、紹介の対価か)によって、契約の性質と、税務の取扱いが変わります。分配の対価が何に対するものかを契約書の中で明確にしておくことが、後の整理を楽にします。
競合する事業者どうしで、販売の価格や地域を取り決める条項は、独占禁止法の問題になり得ます。共同事業で協調する事項は、目的と期間を限り、協議で決める形にとどめます。アプリの課金の設計そのものは特商法表記と課金のページで扱っています。
公開前のチェック:レベニューシェア契約
- 分配の基礎となる売上を定義し、手数料・返金・税・費用を差し引くかを一つずつ決めた
- 売上の報告の時期と方法、根拠資料の閲覧・監査の権利を定めた
- 返金が分配の後に生じた場合の精算を決めた
- 開発費の一部、最低保証、保守の費用の組み合わせを検討した
- 契約の効力の期間と、分配の期間を分けた
- 満了・解除・終了・売却のそれぞれで、分配と権利の扱いを決めた
- 分配の対価が何に対するものかを明確にした
よくあるご質問
レベニューシェア契約で、最も争いになりやすいのはどこですか?
分配の基礎となる売上の定義です。ストアや決済の手数料、返金、消費税、広告費を差し引くかどうかで、分配額は大きく変わります。定義の条で一つの言葉に固定し、差し引く項目を一つずつ決めます。
分配を受ける側として、入れておくべき条項はありますか?
売上の報告の時期と方法、根拠資料を閲覧・確認する権利、分配後に返金があった場合の精算の方法、売上の付け替えや類似のサービスへの誘導の禁止、契約終了後の分配の扱いです。分配する側だけが数字を持つ契約にしないことが大切です。
開発費を受け取らず、売上の分配だけでアプリを開発しても大丈夫ですか?
売上が立たなければ開発の費用を回収できないため、開発費の一部の受取、一定期間の最低保証、保守の費用を別に受け取ることなどを組み合わせて検討します。ソースコードの帰属と、契約終了後の扱いもあわせて決めます。
サービスを終了したり売却したりする場合、分配はどうなりますか?
契約で決めていなければ、争いになります。期間の満了、違反による解除、サービスの終了、事業の売却のそれぞれについて、分配がいつまで続くか、ソースコードや顧客データがどちらに残るかを決めておきます。
紹介料のレベニューシェアで注意することはありますか?
紹介した顧客が返金を受けた場合の紹介料の返還、分割払いの顧客の扱い、紹介の帰属の判定、広告であることの表示、成約した顧客の情報を報告する場合の個人情報の扱いを決めておきます。
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