取引デジタルプラットフォーム消費者保護法への対応

消費者が画面から申し込める場を運営するなら、同法の対象かを定義から確かめ、連絡手段・苦情対応・開示請求を運営の手順に置き換えます。

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「当社は取引の当事者ではない」と規約に書いても、対象になる場では、苦情の受付と販売業者等の情報の開示請求への対応が運営者に求められます。

このページの要点

  • 対象かどうかは、透明化法2条1項のデジタルプラットフォームか、消費者が画面から申込みを送信できる機能などがあるか、取引の相手が販売業者等か、の順に確かめる(取引DPF法2条)。
  • 3条の連絡手段・苦情対応・販売業者等の特定に資する情報の提供要求は努力義務。消費者庁の指針(令和4年内閣府告示第66号)が望ましい取組を例示し、講じた措置は消費者に開示する。
  • 5条の開示請求は、1万円を超える債権を行使する消費者が、確認の必要があり不正目的でない場合に使える。運営者は要件を確認し、連絡できる限り販売業者等の意見を聴いて、開示か不開示かを通知する。
  • 4条の要請は国の制度で、運営者が応じた措置による損害の賠償責任は免除される。アカウント停止の根拠は規約の停止条項に置き、4条を停止の根拠のように引かない。

最初に結論:「該当するか」を定義から確かめ、努力義務を規約とマニュアルの手順に置き換える

結論

出店者や出品者が消費者に商品やサービスを売る場を運営するなら、まず取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(以下「取引DPF法」)の対象かどうかを、定義の条文から順に確かめます。対象なら、3条の措置(連絡手段の確保、苦情への対応、販売業者等の特定に資する情報の提供要求)は努力義務ですが、消費者庁の指針が望ましい取組を具体的に示しているため、規約と運営者向けマニュアルに手順として書いておくのが現実的です。法律上の義務として明確なのは、5条の販売業者等情報の開示請求を受けたときの手続です。要件の確認、販売業者等への意見聴取、開示か不開示かの通知を、運営者が自分で実行できる状態にしておきます。

マッチング、C2Cマーケットプレイス、スキルシェア、予約サイト、クラウドファンディングのように、運営者が当事者ではなく「場」を提供するサービスでは、「当社は取引の当事者ではないので、トラブルは出品者と購入者で解決してください」という規約を置くことが多いです。ところが、取引DPF法は、場の提供者にも、取引の適正化と紛争の解決に協力することを求めています。このページでは、同法の対象になるかどうかの判断、「販売業者等」とは誰か、3条から5条までを運営の手順に落とす方法、メッセージの閲覧やアカウント停止との関係を順に説明します。プラットフォームの規約全体の組み立てはマッチング・C2Cプラットフォームの利用規約で扱っています。

同法の対象になるか:定義を三段に分けて確かめる

取引DPF法2条1項は、取引デジタルプラットフォームを、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(以下「透明化法」)2条1項のデジタルプラットフォームのうち、次のいずれかの機能を持つものと定めています。1号は、消費者が画面に表示される手続に従って、販売業者等に通信販売の申込みの意思表示をできる機能です。2号は、競りなどの方法で、売買や役務提供の相手方になる消費者を決める手続に参加できる機能です。「申込みの意思表示をできる」とは、画面上で購入やサービスの申込みを完結できることを指し、運営者が広告や紹介を載せるだけで、申込みを別のサイトや電話で行う場合は、これに当たらないと見られます。

対象かどうかの判断の順序

第1段階場がデジタルプラットフォームか。多数の者が使う場で、提供者の商品等の情報を常態として表示し、提供者や利用者が増えるほど他方の便益も増す関係があるか(透明化法2条1項)
第2段階消費者が画面から申込みを送信できる機能、または競り等で相手方を決める手続への参加機能があるか(取引DPF法2条1項1号・2号)
第3段階取引の相手方は事業として販売・提供する者か。買い手は事業を行う場合を除く個人か(同条3項・4項)
結果すべて満たせば同法の対象。3条の努力義務、4条の要請、5条の開示請求がかかる

利用者・相手方 運営者 外部の事業者・行政 問題になりやすい点

法律の条文は2026年10月時点の現行規定によります。

第1段階の定義は、多くのプラットフォームに当てはまるように作られていますが、運営者の事業形態によっては当てはまらないこともあります。消費者庁の案内では、ショッピング、フリマ、オークション、予約サービス、クラウドファンディング、スキルシェアなどの、様々な販売業者等が出店するオンラインモールが取引デジタルプラットフォームに当たるとされ、消費者と販売業者等の二者しか登場しない直販サイトは対象外とされています。

対象になる場合と、ならない場合の目安

対象になりやすい

消費者が場の中で申し込む

  • 講師や専門家が自分のページで講座・相談を売り、購入者が画面から申し込む
  • 出品者が商品を出し、購入者が購入手続や入札を行う
  • 店舗や教室が予約枠を出し、利用者が予約と決済を完結できる

個別の検討が要る

運営者の仕組みと利用者の層で変わる

  • 事業者が自分のお客様向けに予約ページを持てるSaaS。ページごとに独立しているか、利用者横断の検索・集客の場があるかで評価が変わり得る
  • 会員がコミュニティ内でサービスを売買できる仕組み

対象になりにくい

消費者が当事者として登場しない

  • 事業者どうしの取引だけに使われ、買い手が事業者に限られるサービス
  • 自社の商品・サービスだけを売る直販サイト
  • 申込みが場の外(電話・別サイト)で行われる広告・紹介サイト

表の分類は、条文の定義を実際のサービスに当てはめる際の目安です。利用者横断の検索や集客の機能を後から追加する場合は、追加の時点で対象になるかどうかを見直します。

事務所の書類では

事業者向けの予約管理サービスの規約・プライバシーポリシー・特定商取引法(以下「特商法」)に基づく表記を確認したとき、取引DPF法の対象になるかを論点として取り上げました。サービスが、事業者ごとに独立した予約ページを提供する形であれば、定義にいう「場」に当たらない可能性が高いと見られる一方、利用者横断の検索や集客の機能があると評価が変わり得ること、この点を直接に判断した消費者庁の明文の資料は確認できなかったことを書き、断定はしませんでした。

講座の販売サイトを、運営者が売主の形から、講師が自分で売るマーケットプレイスの形に変えるかを検討した案件では、変更後は運営者が取引DPF法の提供者に当たると整理しました。講師との業務委託契約が不要になる代わりに、各講師の特商法表記、代金の受け取り方、取引DPF法への対応が必要になり、問題が消えるのではなく入れ替わる、という整理です。

「販売業者等」とは誰か:個人間の取引でも事業者と見られるとき

取引DPF法の対象になるのは、消費者と「販売業者等」の取引です。販売業者等とは、販売を業として営む者または役務の提供の事業を営む者で(2条4項)、営利の意思を持って反復継続して取引を行うことを指します。フリマやスキルシェアのように、個人が出品する場では、出品者が事業者なのか、生活の中の不要品を売る個人なのかが分かりにくく、いわゆる「隠れ事業者」の問題があります。消費者庁は、「販売業者等」に係るガイドライン(令和4年5月1日、最終改正令和7年7月18日)で、画一的な数量・金額の基準は設けず、考慮要素を示しています。

販売業者等への該当性を推認させる事情(ガイドラインの考慮要素の要旨)

着目点事業者と見られやすい事情そうとは限らない事情
商品・役務の性質情報商材、情報商材と同内容の情報を伝えるコンサル、暮らしのレスキューサービスなど、性質上通常は営利で反復して行われるもの単発の不要品の処分
新品・特定のカテゴリー新品や新古品を相当数販売。ブランド品、健康食品、チケット、占いなど特定カテゴリーを多数提供受け取った贈答品が不要なため、単発で販売
出品の方法メーカー・型番が同一の商品を複数出品。同じ内容の役務を複数提供—
許可・資格・登録酒類の継続販売、税務相談など、許可や資格、登録を前提とする販売・役務提供—
評価・口コミ購入者のみが書ける口コミを、一定期間内に継続的に相当数受けている長期間の利用で自然に口コミが増えた場合、引っ越しなどで一時的に大量出品した結果の口コミ

判断の基準時は、原則として取引が行われた時点です(ガイドライン4)。取引デジタルプラットフォームの外で事業として販売している者は、数量や金額にかかわらず、原則として販売業者等に当たります(同5)。

ここで運営者が押さえておくべき点は二つあります。一つは、販売業者等かどうかの判断は取引の時点で個別に行われるため、運営者が登録時に「個人です」と申告させただけでは判断が固定しないことです。出品の頻度、同一商品の数、口コミの件数などを、運営者が把握できる範囲で確認する仕組みがあると、後の開示請求や要請への対応が円滑になります。もう一つは、ガイドラインが、個人間(売主も買主も消費者)の取引は取引DPF法の適用対象にならないとしたうえで、場の提供者に、問合せへの対応、取引の監視、本人確認、エスクローなどの取組を期待していることです。法律の対象外でも、運営者の手順として置くことは差し支えありません。

3条の努力義務を、規約とマニュアルの手順に置き換える

3条1項は、運営者が次の三つの措置を講ずるよう努めなければならないと定め、同条2項は、講じた措置の概要と実施状況を、消費者に開示するとしています。いずれも努力義務ですが、消費者庁は、同条3項に基づく指針(令和4年内閣府告示第66号)で、基本的な取組と望ましい取組の例を示しています。指針は、他の法律に基づく取組が3条の措置に相当する場合には、それを行うことで努力義務を守っていると考えられるとも述べています。

3条1項の三つの措置と、指針の望ましい取組の例

措置指針の基本的な取組指針が挙げる望ましい取組の例
1号 消費者が販売業者等と円滑に連絡できるようにする連絡先や連絡手段を、消費者が容易に認識できる場所と大きさで示す。合理的な期間、相当な時間帯に連絡が取れるようにする特商法11条の表示に関する専用ページを設ける。連絡先とあわせて対応可能日時を記載させる。専用のメッセージ機能を提供する。連絡先が機能しているか定期的に確認する。返信がないときに回答を促し、内部の標準処理期間を設ける
2号 苦情を受けたときに表示の適正を確保する苦情を申し出やすい仕組みを設け、受けた苦情について事情の調査などの措置を講ずる注文確認画面や商品ページに苦情申出のリンクを置く。受付の回答をする。権利者や監督官庁に照会できる体制を整える。規約に基づき違反に比例した制裁をとる。禁止対象を具体的に定める。危険性の高い商品は事前審査や注意書きの記載を求める
3号 販売業者等の特定に資する情報の提供を求める開示請求の対応や苦情の調査で問題のおそれがある事例に接したとき、特定に資する情報の提供を求める登録時に法人番号や登記事項証明書、個人事業主の住民票や事業証明書を提出させる。氏名と口座名義の一致を確認する。許認可が要る場合は証明書を提出させる。登録情報と異なる情報に接したら事実確認をする

指針の「望ましい取組」はベストプラクティスの例で、すべてを行わなければならないという趣旨ではありません。運営者は、事業の実態に応じて適切な措置を選びます。

2項の開示は、施行規則(令和4年内閣府令第9号。以下「施行規則」)1条と2条が、方法と内容を定めています。消費者が画面でいつでも容易に閲覧できるように表示すること、明確で平易な表現を用いること、日本語で作成すること(日本語以外のときは日本語訳を付す)が求められ、内容は、講じた措置の概要、その実施状況、そのほかの消費者保護の措置です。指針は、開示の場所として、サービス内の「ご利用ガイド」「ヘルプ」といったページを例に挙げています。

出品者の連絡先の表示と、登録情報の提供に関する条文例(要旨)

第1項

出品者は、本サービスにおいて消費者に商品又は役務を提供する場合、特定商取引に関する法律第11条その他の法令に基づく表示事項を、当社が定める方法により、取引の申込みの前に購入者が確認できる場所に表示しなければならない。

第2項

出品者は、連絡先(電話番号、電子メールアドレス等)及び連絡可能な日時を登録し、購入者からの連絡に、合理的な期間内に応答するものとする。

第3項

当社は、出品者に対し、出品者の氏名又は名称、住所その他出品者の特定に資する情報及びこれを裏付ける資料の提出を求めることができる。出品者が正当な理由なくこれに応じない場合、当社は、出品の停止その他の必要な措置を講じることができる。

第4項

出品者は、第1項及び第2項の登録内容に変更があったときは、遅滞なく当社に届け出なければならない。

特商法11条の表示は、出品者が事業者である場合に出品者自身の義務です。運営者は、表示の場所を用意し、出品者に義務を課す条項を置きます。

苦情・通報の定めの改訂例

苦情の受付

改訂前運営者は、出品者と購入者の間のトラブルに関与しない。
改訂後出品者又は購入者は、取引に関する申告を、運営者所定の方法により行うことができる。運営者は、取引DPF法3条の趣旨に従い、事実関係の照会その他の合理的な範囲の対応を行う。

取引に関与しない旨だけでは、苦情の受付先が分からない。受付と調査を行う旨を書き、運営の手順に結び付ける。

連絡手段

改訂前出品者は、購入者から連絡があった場合には誠実に対応する。
改訂後出品者が表示する連絡先が機能しないと運営者が判断した場合、運営者は、回答を促し、なお応答がないときは、出品の停止等の措置を講じることができる。

連絡先が機能しているかの確認は、指針の望ましい取組の例にある。応答がない場合の措置を規約に置く。

改訂前は、一般的に使われる規約の定め方の例です。自社の運営の規模に合わせて、確認の頻度や応答期限を決めます。

4条の要請:運営者が応じたときの免責と、規約での手当て

4条は、内閣総理大臣(消費者庁)が運営者に、販売業者等による出品の停止などを要請できる場合を定めています。要請の対象になる表示は、商品の安全性の判断に資する事項その他の重要事項について、著しく事実に相違する表示、または実際のものよりも著しく優良もしくは有利であると人を誤認させる表示です(同条1項1号)。重要事項の範囲は、施行規則3条が、安全性の判断に資する事項、国や地方公共団体その他著名な法人や個人の関与、原産地・製造地・商標・製造者名、許認可や資格、登録や経験を証する事項、そのほか消費者の判断に通常影響を及ぼす事項と定めています。

さらに、その表示をした販売業者等が特定できない、所在が明らかでないなどの理由で、販売業者等による是正が期待できないことが要件です(同項2号)。要請を受けて措置をとった運営者は、その措置により販売業者等に生じた損害について賠償責任を負いません(同条3項)。この免責は、法律が直接に定めているため、規約に書かなくても働きますが、出品者に対して、運営者の判断で出品を停止できる権限を規約に置いておくことで、要請を受けた場合に速やかに動けます。

消費者庁は、この要請を実際に行っています。2025年には、安全規格への適合を示す表示について実物を確認した案件や、短期間でほとんど何もせずに高額の収入を得られるかのように表示して販売されていた情報商材の案件で、運営者に表示の削除等を要請したことが、消費者庁の説明資料(令和8年7月17日)に示されています。あわせて同資料には、要請の対象を、取引デジタルプラットフォームの提供者以外のインターネット取引の基盤提供者(広告やSNSのプラットフォームなど)にも広げることを検討する方向性が書かれています。方向性の段階の内容ですので、法改正が行われたときは、条文を確認し直してください。

4条の要請に備える運営者の準備

  • 出品者が表示する重要事項(安全性、許認可、資格、国や著名人の関与など)について、禁止する表示を規約とガイドラインで具体的に定めている
  • 要請を受けたときに、出品の停止、表示の削除、決済の保留を行える権限が規約にある
  • 出品者の氏名・住所・連絡先を、運営者が保有していて、確認できる状態にある
  • 要請を受けた場合の社内の担当者と、判断の記録の様式が決まっている
  • 4条の要請と、規約による出品者のアカウント停止を、手順の上で別のものとして扱っている

最後の項目は、次の節の内容にも関係します。

最後の項目について補足します。4条は、表示が虚偽等で販売業者等が特定できない場合の、国による要請の規定です。対面で提供されるサービスで事故があったとき、出品者のアカウントを止める根拠は、4条ではなく、規約の停止条項にあります。規約や運営者向けの基準で「取引DPF法に基づき停止する」と書くと、定めの射程を誤ります。停止の根拠は規約の事由に置き、取引DPF法は、苦情対応や異議申立ての手順を整える際の趣旨として引用します。

5条の開示請求:受付から意見聴取、通知までの手順

5条は、消費者が運営者に、販売業者等の情報の開示を請求できる権利を定めています。販売業者等と連絡が取れないなどのために、消費者が販売業者等に対する損害賠償請求などの金銭債権を行使しようとしても、相手の氏名や住所が分からないという問題に対応するものです。請求できるのは、次の要件をすべて満たす場合です(消費者庁のQ&A【第5条関係】)。

  • 取引デジタルプラットフォームを通じて売買契約等を行った者が、事業を行う場合を除く個人(消費者)であること
  • 取引の相手方が販売業者等であること
  • 販売業者等との契約に係る、金銭の支払を目的とする債権で、その額が1万円を超えるもの(施行規則4条)を行使するための請求であること
  • 販売業者等情報の確認を必要とすること
  • 販売業者等の信用を毀損する目的その他の不正の目的ではないこと

開示を受けられる情報は、施行規則5条が、氏名または名称(法人は名称と代表者の氏名)、住所、電話番号、ファクシミリ番号、電子メールアドレス、法人番号と定めています。請求者は、確認を必要とする理由、請求する情報の項目、開示を受けた情報を不正の目的で利用しない旨の誓約を記載した書面または電磁的記録を、運営者に提出します(5条2項)。提出の方法は、書面なら郵便または信書便、電磁的記録なら電子メールや運営者のアプリ、ホームページの受付フォームなどです。消費者庁は標準書式を公表しており、運営者はそれを自社の受付フォームの項目設計に使えます。

開示請求を受けたときの手順(消費者庁のQ&Aを踏まえた例)

  1. 請求書の受領と形式の確認請求書に必要事項がそろっているか確認する。記載漏れや不明点があれば、請求者に補正を促す。受付日を記録する
  2. 請求者の確認請求書の取引内容(アカウント、取引日時、注文番号など)や、請求を受けたアカウントのログイン状況で、取引の購入者本人と確認する。代理人の請求は、代理権を示す書面で確認する。過度な負担を課さない
  3. 要件の確認消費者であること、販売業者等であること、1万円を超える債権が存在する外観があること、確認の必要があること、不正の目的でないことを確認する
  4. 販売業者等への意見聴取要件に当たると考えるときは、連絡できない場合を除き、開示するかどうかについて販売業者等の意見を聴く(5条3項)。合理的に期待される手段を尽くせば連絡できる場合は、連絡できない場合に当たらない
  5. 開示か不開示かの判断と通知意見を踏まえ、要件を満たせば速やかに開示する。満たさなければ、理由とともに不開示を請求者に通知する。いずれも販売業者等にも知らせることが望ましい
  6. 記録の保存受付日、確認した事項、開示か不開示かとその理由、対応日を記録する

請求を拒否された請求者は、裁判所に訴えを提起して開示を求めることができます(Q&A)。

手順を作る際には、消費者庁のQ&Aが示す、いくつかの細かい整理が役に立ちます。運営者が保有していない販売業者等情報までの開示は求められません。ただし、保有する情報が事実と異なると分かっている場合や、問題のおそれがある事例に接した場合には、運営者は、販売業者等に最新の情報や裏付けの資料の提供を求めたうえで、請求に対応することになります。特商法の表示として、運営者やバーチャルオフィスの電話番号が表示されていて、それを通じて消費者が販売業者等に連絡できている間は、電話番号を確認する必要がなく、開示されません。連絡が取れない場合や、訴訟のために住所を把握する必要がある場合には、確認の必要があると認められ、他の要件も満たせば開示されます。

個人情報保護法との関係も、Q&Aが整理しています。5条の要件を満たす請求を受けて、施行規則5条の販売業者等情報を消費者に開示することは、個人情報保護法27条1項1号の「法令に基づく場合」に当たると考えられます。反対に、5条の要件を満たさない請求に応じて開示すると、個人情報保護法に抵触するおそれがあります。このため、要件の確認を省いて、請求者の求めにそのまま応じる運用は避けます。意見聴取を経て開示した場合の運営者の責任について、Q&Aは、要件の確認や意見聴取の手続を経ているなら、販売業者等に対して法的な責任を負うことはないのではないかと述べています(最終的には司法判断によります)。

開示請求の受付手順を作るときに決めておくこと

  1. 請求を受ける窓口と、受け付ける形式は何か書面は郵便・信書便、電磁的記録は電子メールや受付フォームなど、施行規則6条の方法に合わせて決める
  2. 出品者の氏名・住所・電話・メールを、運営者はどこまで保有しているか保有していない情報は開示できない。登録時の取得と、変更時の更新、裏付け資料の保管の有無を確認する
  3. 出品者への意見聴取は、どの連絡手段で、何日を期限とするか連絡手段はメール、アプリ内メッセージなど。期限は法律に定めがないため、運営者が決め、規約かマニュアルに書く
  4. 請求者の情報を出品者にどこまで示すかQ&Aは、販売業者等が意見を述べられるように、原則として消費者に関する情報等を開示するとしている。プライバシーポリシーの記載と整合させる
  5. 開示を拒否した場合の理由の伝え方請求者に不開示の理由を示す。理由の例を、マニュアルにあらかじめ書いておく

回答は、運営者のシステム構成と担当者の人数によって決まります。

事務所の書類では

C2Cマーケットプレイスの運営者向けマニュアルを作るとき、5条の開示請求への対応は、請求者の本人確認、要件の確認、意見聴取、開示か不開示かの判断と通知、記録の順で書きます。規約には、購入者が5条の要件を満たすときに運営者所定の方法で請求できること、様式や手順は運営者のマニュアルで案内することを定めます。出品者側の規約には、登録情報を運営者が保有し、法令に基づく開示に応じることがあると書き、プライバシーポリシーの第三者提供の例外(法令に基づく場合)と整合させます。

取引メッセージの閲覧・評価の削除・アカウント停止と、プライバシーポリシー

3条の措置を実行するために、運営者は、利用者どうしのメッセージや取引の記録を確認することがあります。苦情の事情を調べる、販売業者等の連絡先が機能しているかを確かめる、出品者に意見を聴く、といった作業です。利用者は、メッセージを相手方に宛てたものと考えているため、運営者が自由に読めるとは思っていません。規約とプライバシーポリシーで、運営者がメッセージを閲覧する場合を絞って定め、その範囲を利用目的に書いておきます。

運営者による取引メッセージの閲覧の範囲の考え方

場面閲覧してよいか規約・ポリシーでの書き方
購入者または出品者からの申告・通報があったとき申告の対象の取引に限って確認する申告の事実関係を確認するため、当該取引のメッセージを確認することがある
当事者から確認の依頼があったとき依頼した当事者が参加している取引に限る当事者の依頼があった場合に、当該取引のメッセージを確認することがある
開示請求や要請の対応のため調査に必要な範囲で確認する法令に基づく請求や要請に対応するため、必要な範囲で確認することがある
何の申告もないとき原則として確認しない。不正検知のための自動的な確認は、目的と範囲を別に書く不正利用の検知のため、禁止行為に当たるおそれのある表現を自動的に検知することがある(行う場合に限る)

運営者が実際に行う確認の範囲より広く書くと、利用目的の特定が不正確になります。行っていない自動検知を書かないことも、同じ理由です。

評価・レビュー機能がある場合は、運営者が評価を削除できる範囲を、規約違反などの事由に限っておきます。購入者から出品者への評価を投稿者が削除できないようにしたうえで、運営者の削除権限を、規約に違反する内容の評価に限定する設計があります。投稿コンテンツの権利許諾の条項に「運営者は投稿を任意に削除できる」と書いてしまうと、評価の削除権限を限定する定めと食い違うので、評価についての定めを優先する旨を書き分けます。口コミや評価の削除要請の手順は、投稿の削除依頼と発信者情報開示への備えで説明しています。

アカウントの停止については、証拠の基準を運営者向けの内部基準として定め、規約には、運営者が定める内部の基準に沿って運用する旨を一文で書く形が使えます。基準を利用者向けの個別の規程として公開すると、規約の「個別規定が優先する」という条項とあわせて、基準そのものが利用者を拘束する規程になるためです。停止の判断では、捜査機関からの照会や報道を、事実確認の端緒として扱い、それだけでは停止事由に当たるとはしません。判決や行政処分、本人の申告、取引の記録など、運営者が確認できる資料で事実を確認したうえで判断します。停止後の異議申立てに対応する窓口を置くことも、3条の趣旨に沿った運営です。アカウント停止の事由の分類はマッチング・C2Cプラットフォームの利用規約に書いています。

デジタルコンテンツやファンクラブのように、運営者が代金を預かり、制作者に分配するサービスでも、取引DPF法の定義に当たれば、同じ手順が必要になります。そのようなサービスでの売上金の扱いはデジタルコンテンツ販売・ファンクラブ型プラットフォームの規約で説明しています。

起きがちなこと

よくあるご質問

個人が運営する小さなマッチングサイトでも、取引DPF法の対象になりますか。

規模は要件ではありません。消費者が画面から申込みを完結できる機能を持ち、多数の者が使う場として定義(透明化法2条1項)に当たれば、対象になり得ます。事業者向けの取引だけを扱うサービスや、申込みが場の外で行われるサービスは対象外になりやすいです。サービスの形ごとに定義へ当てはめて確認します。

3条の措置を講じなかった場合、罰則はありますか。

3条は努力義務で、講じなかったことを直接の理由とする罰則は定められていません。ただし、消費者庁は誰からでも申出を受け付ける制度を設けており(10条)、必要な調査と措置につながる可能性があります。努力義務を果たす手順を整えることは、紛争が起きたときに運営者の対応を説明する材料にもなります。

開示請求を受けても、出品者に断られたら開示しなくてよいですか。

出品者が開示に同意しない場合でも、運営者は意見を聴いたうえで、要件を満たすかどうかを自分で判断します。消費者庁のQ&Aは、意見聴取に対して回答がない場合や同意しない場合を含めて、意見を踏まえて要件を満たすと判断したときは速やかに開示するとしています。

請求額が1万円以下の場合は、開示を断れますか。

5条1項は、請求の対象となる債権の額が内閣府令で定める額を超えるものに限ると定め、施行規則4条はその額を1万円としています。1万円を超えない場合は、5条の要件を満たさないため、同条に基づく開示には応じません。そのほかの法令に基づく開示の要否は別に考えます。

運営者が代金を預かっていない場合でも、同法は関係しますか。

代金の預かりの有無は、取引DPF法の対象かどうかの要件ではありません。代金を運営者が預かるかどうかは、資金決済法などの別の法律の問題です。消費者が画面から申込みを行える機能があり、販売業者等との取引であれば、決済が運営者の外で行われる場合でも、対象になり得ます。

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