投資・不動産・家計のアプリとWebツールの業法の線引き

判断を助けることと、助言することは、法律の上では近い場所にあります。規約の一文ではなく、機能・画面・料金・ストアの申告をそろえます。

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規約に「投資助言ではありません」と書いても、画面に売買の指示が出ていれば意味がありません。価格を金額で示す診断は、不動産鑑定業に当たるおそれがあります。

このページの要点

  • 投資助言・代理業は金融商品取引法の登録業務(28条3項、29条)。個別・相対性の高い情報の提供や、会員登録が必要な提供は、監督指針の考え方で登録が必要になりうる。
  • 取引履歴の記録・集計・可視化にとどめ、売買の時期や水準を示さない。専用プログラムはデータの送信に限り、「行わない業務」を機能一覧と一対一で規約に書く。
  • 有料で特定の不動産の価額を金額で表示すると、不動産鑑定業に当たるおそれが高い(鑑定評価法2条、33条、55条2号)。参考利回りの比較に置き換える。
  • 成約連動の報酬は媒介と見られやすい(宅建業法2条2号、12条1項)。口座連携は電子決済等代行業、融資の斡旋は貸金業になりうる。

最初に結論:「情報提供にとどまる」は、規約の一文ではなく、機能・画面・料金・ストアの申告の4か所でそろえる

結論

投資、不動産、家計を扱うアプリやWebツールは、機能の作り方によって、免許・登録が必要な業務に近づくことがあります。投資の売買タイミングを個別に示すと金融商品取引法の投資助言・代理業、不動産の価格を金額で表示して報酬を得ると不動産の鑑定評価に関する法律の不動産鑑定業、成約に連動する報酬を受け取ると宅地建物取引業法の媒介、銀行口座から情報を取得すると銀行法の電子決済等代行業、融資を斡旋すると貸金業法の貸金業、という具合です。規約に「投資助言ではありません」と書いても、機能が助言になっていれば意味がありません。反対に、機能を記録・集計・可視化にとどめ、画面の言葉と料金の取り方も同じ方向にそろえれば、規約の一文が実態を説明する文書になります。

この領域のアプリは、運営者が資格を持たない個人や小さな会社であることが多く、サービスの魅力は「判断を助けてくれる」ことにあります。ところが、判断を助けることと、助言をすることは、法律の上では近い場所にあります。どこまでが便利な機能で、どこからが免許の必要な業務なのか。その線は、条文だけでなく、行政の示す考え方と、実際の画面の見え方で決まります。

アトラス行政書士法人は、擬似投資と家計の振り返りを体験するアプリ、FXの取引履歴を記録・分析・共有するサービス、個人の不動産投資家向けの管理ツール、投資用不動産の価格診断サービスなど、この領域の規約とプライバシーポリシーを作成・検討してきました。どの案件でも、最初に作るのは規約ではなく、機能の一覧と、それぞれについての「やること」「やらないこと」の表です。このページでは、その表を作る順番で、投資助言・代理業、取引履歴ツールと擬似投資、不動産の価格診断、成果報酬と宅建業、家計・不動産管理ツールの周辺業法、そして、規約・画面・機能・ストアの申告をそろえる方法を説明します。

業法に当たるかを確かめる質問の順番

売買のあっせん不動産の売買・賃貸の仲介や、取引の斡旋をしていないか
価額の表示特定の不動産について、価額を金額で示して報酬を得ていないか
投資判断の助言個別の銘柄・通貨ペア・売買時期を示して、報酬を得ていないか
資金・情報の移動利用者の資金を預かって他の人へ渡す、または銀行口座の情報を取得していないか
貸付けの媒介融資・ローンを斡旋し、貸付けの媒介をしていないか

利用者・相手方 運営者 外部の事業者・行政 問題になりやすい点

すべての質問に「いいえ」と答えられるときに限り、規約に「行わない業務」を並べることが意味を持ちます。「はい」が出る機能は、設計を変えるか、必要な免許・登録を確認します。

投資助言・代理業:登録が必要になる線

金融商品取引法は、投資助言・代理業を、金融商品取引業の一つとして規定し(28条3項)、金融商品取引業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行えないとしています(29条)。投資助言の中核は、投資顧問契約に基づく助言です。同法2条8項11号は、当事者の一方が相手方に対して、有価証券の価値等や、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断について、口頭、文書その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を、投資顧問契約と定めています。ただし、新聞、雑誌、書籍のように、広く一般に向けて発売され、誰でもいつでも買える文書による助言は、この定義の対象から外れています。

アプリで問題になるのは、「不特定多数向けに誰でも買える情報」と「個別性の高い情報を会員に提供するサービス」の境目です。金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」は、投資助言・代理業の章で、登録の要否の判断の留意点を示しています(VII-3-1(2))。不特定多数の者を対象に、不特定多数の者が随時に購入できる方法で投資情報等を提供する行為は、登録が不要とされる例があります。ただし、不特定多数を対象にする場合でも、インターネット等を利用して個別・相対性の高い投資情報等を提供するときや、会員登録等をしないと投資情報等を購入・利用できず、単発での購入・利用を受け付けないときは、登録が必要になることに留意するとされています。投資分析ソフトのダウンロード販売は、誰でも自由に購入できる場合は登録不要の例とされる一方、利用に際して、販売業者から継続的に投資情報等のデータやサポートを受ける必要がある場合は、登録が必要になることがあります。

機能ごとの、助言に当たる可能性と設計の注意

機能助言に当たる可能性設計の注意
自分の取引履歴の記録・損益の集計・グラフ表示低い(利用者のデータを機械的に処理するだけ)表示に、売買を勧める文言や、推奨の順位を混ぜない
市況や経済指標の一般的な解説低い(一般的な情報提供)特定の銘柄・通貨ペアの売買時期に結び付けない
利用者の取引傾向の分析(勝率、時間帯別の成績など)低〜中「この時間帯は避けるべき」のような指示に変えない。結果の表示にとどめる
特定の銘柄・通貨ペアについて、売買の時期や水準を示す高い会員登録が必要な有料サービスなら、登録の要否を確認する
AIが、利用者ごとに売買の判断を出す高い個別・相対性が高く、助言に近づく。出力の文言と、有料化の仕方を見直す
シグナルの配信、他者の取引のコピー高い規約で「行わない」と書くだけでなく、機能として設けない

無料の提供でも、会員登録や上位プランへの誘導と結び付いていると、監督指針の挙げる「会員登録等を行わないと利用できない」場合に近づきます。無料だから対象外、とは決めつけません。

取引履歴ツール、専用EA、擬似投資アプリ

FXの取引履歴を記録して分析し、チームで共有するサービスは、利用者が自分で行った取引を材料にする点で、助言サービスとは違います。事務所が起案した規約では、サービスの目的を、利用者自身による取引履歴の管理、振り返り、成績の可視化、傾向の分析、チーム内の情報共有を支援することと書き、金融商品の売買、投資判断、投資助言、売買タイミングの指示、推奨通貨ペアの提示、自動売買、コピートレード、シグナル配信といった行為を提供しない、と一つずつ列挙しました。そのうえで、表示される情報は、利用者が送信した取引データを機械的・統計的に処理したものであり、将来の相場や利益を保証しない、という定めを置いています。

取引データをサービスに送るために、専用のEA(取引プラットフォーム上で動くプログラム)を提供する場合は、そのEAの機能を、データの送信と連携に限る、と規約に書きます。自動売買、売買判断、発注、決済、ポジション管理、シグナル配信などの機能を持たせないことを、プログラムの設計と規約の両方で明確にします。EAの動作不良で取引の損失やデータの欠落が出ても、運営者の故意または重過失による場合を除いて責任を負わない、という定めは、損害賠償責任を一部免除する条項として書きます。

提供しない行為を列挙する条文例(取引履歴ツール)

第1項

本サービスは、利用者自身の取引履歴の記録、管理、可視化および分析を支援する情報管理サービスであり、金融商品取引法上の投資助言・代理業、投資運用業その他の金融商品取引業として提供するものではありません。

第2項

当社は、特定の金融商品、通貨ペア、売買の方向、売買の時期、エントリーまたは決済の水準、ロット数その他の具体的な投資判断について、助言、推奨、勧誘、指示を行いません。

第3項

本サービスに表示される分析結果、統計、グラフ、ランキングその他の情報は、利用者が送信または登録したデータを機械的または統計的に処理した結果であり、投資助言、投資勧誘または売買の推奨を目的とするものではありません。

第4項

専用プログラムは、取引データの送信および本サービスとの連携のみを目的とし、自動売買、売買判断、発注、決済、シグナルの配信その他これらに類する機能を提供しません。

条文は、機能一覧の「やらないこと」と一対一に対応させます。条文に書いたことを、実際の機能が超えていないかを、公開前に点検します。

この種のサービスで見落とされやすい点が三つあります。一つは、チーム機能やランキングです。利用者どうしが取引結果を共有したり、成績上位者を表示したりする機能は、他の利用者の取引を真似る動機を生み、コピートレードや勧誘の場に変わりえます。規約に、共有データを営業、勧誘、投資助言のために使う行為を禁止する条項を置きます。二つ目は、取引履歴の真正性です。ランキングや共有データの信頼性を保つために、利用者が個別の取引データを削除・修正できない設計にする場合、その旨と例外(アカウント削除時の消去など)を書きます。三つ目は、運営者による利用者データの利用です。運営者が、利用者の取引データを、自らの投資判断の参考にする場合があると定めるなら、利用者への開示の方法と、助言サービスではないという説明との整合性を、よく検討する必要があります。

擬似投資・家計の振り返りアプリ

仮想の資金で投資を体験するアプリは、実際の売買をしないため、投資助言とは別の位置づけになります。それでも、画面に表示される「この銘柄は買い」のような判断が、実際の投資判断として読まれるなら、助言の議論は残ります。実取引と資金が一切関わらないこと、表示される結果は学習用の試算であることを、規約、画面、ストアの説明で、同じ言葉で示します。

アプリストアの審査も関わります。Appleの App Store Review Guidelines の3.2.1(viii)は、金融取引、投資、資金管理に使うアプリは、そのサービスを行う金融機関が提出し、提供する地域で必要な免許と許可を持っていなければならない、としています。5.1.1(ix)も、銀行や金融サービスなど、規制の強い分野のアプリは、個人の開発者ではなく、そのサービスを提供する法人が提出するよう求めています。擬似投資・学習用のアプリがこれらの対象に当たるかを、明示的に示した文言は見当たりません。そのため、実際の取引や資金を伴わないことを、アプリの説明、審査担当者への説明、画面の表示で、そろえて示す運用が必要です。ストアの審査全般は、アプリストアの審査で求められる、規約とプライバシーポリシーで説明しています。

不動産の価格診断:金額で示すと鑑定評価に近づく

投資用不動産について、入力された物件の価格や賃料から、割安・相場並み・割高を判定するWebサービスは、投資家にとって使い勝手の良い機能です。ところが、判定の結果を「相場価格 ◯万円〜◯万円」のように金額で示し、利用者から料金を受け取ると、不動産の鑑定評価に関する法律の不動産鑑定業に当たるおそれが高くなります。

不動産鑑定評価法の条文と、診断サービスの当てはめ

条文の要件診断サービスの場合判断
不動産の経済価値を判定する(2条1項)入力された特定の物件について、割安・割高などの価値を判定する当たりうる
その結果を価額に表示する(同項)価格を「◯万円〜◯万円」の金額で表示する当たりうる
他人の求めに応じ報酬を得て、業として行う(2条2項)利用者の求めに応じ、回数や月額の料金を受け取り、反復継続して提供する当たりうる
適用除外(52条)農地等の取引価格、損害保険の保険価額、建築士事務所の建物の鑑定の3つのみ該当しない
登録なしに営む行為の禁止(33条)、罰則(55条2号)1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科違反すると適用される

「鑑定評価ではありません」と書き添えるだけでは、この当てはめは変わりません。

国土交通省の「先進的な技術の活用等により多様化するニーズへ対応するための不動産鑑定評価手法の在り方に関する検討業務 報告書」(平成31年3月)は、鑑定評価法と自動価格査定等の項で、鑑定評価業務は不動産鑑定士の独占業務であり、不動産鑑定士の資格を持たない者が、報酬を得て、不動産の経済価値を価額に表示することはできない、と述べています。そして、自動価格査定サービスは、無償提供の形式をとっているものが多く見られる、と書いています。不動産会社が行う無料の査定は、媒介の業務に付随して、価格の意見を述べるものです(宅地建物取引業法34条の2第2項は、媒介契約に関して価額や評価額の意見を述べる業者に、その根拠を示す義務を課しています)。

価格診断の設計の選択肢

利回りの比較で示す

価格は表示しない設計

  • 有料の診断は、参考利回りの比較(割安・相場並み・割高)で示す
  • 「相場価格」「適正価格」「査定額」という言葉を使わない
  • 診断結果は、入力値と一定の計算に基づく試算と位置づける

価格の目安を全員に無料で出す

有料機能と切り離す設計

  • 価格帯の表示は無料とし、有料は履歴の保存・比較など別の機能にする
  • 無料の価格表示が有料機能や成果報酬と一体だと、報酬を得て行うと見られる余地が残る
  • 価格を示す対象と範囲を限る

制度を使って確認する、または現状のまま

確認か、リスクを負う設計

  • 産業競争力強化法のグレーゾーン解消制度で、事前に確認する
  • 現状のまま有料で価格を示すと、刑事罰、決済アカウントの停止、提携先との関係悪化の可能性がある

選ぶのは運営者です。事務所の書類では、選んだ設計に合わせて、診断の定義、内容、結果の画面の文言、広告の表現を、規約と画面でそろえます。

結果画面の言葉と、規約の位置づけ:改訂の例

診断結果の表示

改訂前診断の結果、この物件の相場価格は◯万円〜◯万円です。相場より◯万円ほど高い価格で購入しようとしています。
改訂後入力された数値と、最寄り駅・駅からの距離ごとの参考利回りに基づく試算では、この物件の利回りは相場の参考利回りより低い水準です。本診断は不動産鑑定士による鑑定評価ではなく、将来の価格や収益を保証するものではありません。

価格と差額を金額で示す表示は、経済価値を価額に表示することになります。利回りの比較に置き換え、鑑定評価ではない旨も、画面で明示します。

提携先からの成果報酬と、宅地建物取引業法の媒介

価格診断や不動産管理のツールには、診断結果から提携の不動産会社へ案内し、成約したときに報酬を受け取る収益モデルがあります。宅地建物取引業法は、宅地・建物の売買、交換、貸借の代理または媒介をする行為で業として行うものを、宅地建物取引業とし(2条2号)、免許を受けない者が営むことを禁止しています(12条1項)。違反は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です(79条2号)。

成約に連動する報酬を受け取ると、物件の売買の媒介をしたと見られやすくなります。経済産業省が公表した、グレーゾーン解消制度の回答(平成28年6月15日、同年12月27日)は、顧客の同意を得て不動産業者へ情報を提供し、売買が成立したら不動産業者から手数料を受け取る事業について、物件の説明や取引条件の交渉・調整に事業者が一切関与せず、顧客と不動産業者が直接行う場合は、宅地建物取引業に該当しない、としました。これは照会者の示した事実を前提にした個別の回答で、他の事業に当然に当てはまるものではありません。

成果報酬を採るときの設計の点検

  • 開始時は、成約に連動しない定額の広告掲載料、または問合せ件数に応じた広告料から始める
  • 物件の説明、価格の交渉、条件の調整に、運営者が一切関与しない旨を、提携先との契約と規約に明記した
  • 診断結果の画面から、特定の提携先に誘導しない(「割安でした、この会社へ」の導線を置かない)
  • 広告欄は診断結果とはっきり分け、広告であることを示した
  • 提携先から受け取る成約情報は、個人を特定しない集計値にとどめた
  • 広告主が宅地建物取引業の免許を持つことを確認してから掲載する流れにした

家計・不動産管理・融資の周辺:口座連携、貸付けの媒介、税務

家計管理や不動産投資の管理ツールは、機能が増えるほど、周辺の業法に触れる場面が出てきます。特に、次の4点は、画面を設計する前に確認します。

家計・不動産管理ツールで確認する周辺業法

機能関係する法律確認すること
銀行口座と連携して残高や入出金を取得する銀行法2条21項(電子決済等代行業の定義)、52条の61の2(登録)銀行から利用者の口座の情報を取得し、利用者に提供する行為は、電子決済等代行業に当たりうる。自社で行うか、登録を受けた事業者のサービスを使うかを決める
融資・ローンを紹介・斡旋する貸金業法2条1項(貸金業の定義に金銭の貸借の媒介を含む)、3条(登録)貸付けの媒介を業として行うと貸金業になりうる。紹介の方法と報酬の取り方を確認する
確定申告書・税務書類の作成、税務相談税理士法2条(税理士業務)、52条(税理士業務の制限)税務に関する書類の作成や相談を、運営者が行わない設計にする。計算結果は参考情報とする
利用者の資金を預かって他の人へ渡す資金決済法(資金移動業)預かりと送金を伴う機能は、設計の初期に別の確認が必要。マッチング・C2Cプラットフォームの利用規約で整理した収納代行の考え方が参考になる

規約に、行わない業務として、不動産の仲介、投資の助言、融資の斡旋、税務の相談などを並べる場合は、この表の機能が実際にないことを確認します。

事務所が起案した個人投資家向けの不動産管理ツールの規約では、運営者が不動産投資、融資の申込み、物件の購入・売却、賃貸経営などの意思決定を補助する情報処理ツールを提供し、特定の取引を推奨したり、適否を判断したり、成果を保証したりするものではない、と書きました。収支予測、利回り、返済計画、事業計画書、AIの出力は、利用者が入力した情報と一定の仮定に基づく参考情報であり、融資の承認、物件価格や賃料の維持、投資利益、節税効果を保証しない、という定めも置いています。利用者は、投資、融資、税務などの重要な判断をするとき、原資料や最新の情報と照らし合わせます。

規約・画面・機能・ストアの申告を、同じ言葉でそろえる

業法の線の内側にサービスを収める方法は、一つの書類で完結しません。機能の設計、規約の定め、画面の言葉、料金の取り方、広告の表現、ストアへの申告の内容が、同じ方向を向いている必要があります。一か所でもずれると、そのずれが、行政や審査担当者、利用者から見て、実態を判断する材料になります。

「行わない業務」を、実態に結び付ける手順

  1. 機能の一覧を作る画面ごとに、利用者が入力するもの、運営者が表示するもの、報酬が発生する場面を書き出します。
  2. 機能ごとに、当たりうる業法を当てはめる上の質問の順番で、宅建業、鑑定評価、投資助言、資金移動、貸金業、電子決済等代行業、税理士業務に当たらないかを確認します。
  3. 当たる機能は、設計を変える金額の表示を利回りに変える、個別の売買指示をやめる、成約連動の報酬を定額にする、といった変更を行います。
  4. 規約に、行わない業務を書く実態に合わせて列挙し、利用者の自己判断と責任、情報の非保証を書きます。
  5. 画面・広告・ストアの説明を、規約の言葉にそろえる「相場価格」「おすすめ」「必ず」といった言葉や、画面の注意書き、ストアの説明文を点検します。

機能を追加するたびに、1から3の手順に戻ります。規約だけを先に更新しても、追加された機能が業法に触れていれば、意味がありません。

免責の書き方にも注意が要ります。「一切の責任を負わない」と全部免責する条項は、消費者との関係では、消費者契約法8条1項で無効になります。投資や融資の判断は利用者自身の責任である、という趣旨は書けますが、運営者の故意または重過失による場合まで責任を免れる書き方はできません。個人情報の取扱いと、海外のクラウドを使う場合の整理は、アプリのプライバシーポリシーの書き方と、必須の記載事項と個人情報の第三者提供と、海外のクラウド・SaaSを使うときの整理で扱っています。

よくあるご質問

投資の記録・分析アプリは、投資助言・代理業の登録が必要ですか。

利用者が自分の取引履歴を記録して集計・可視化するだけで、売買の時期や水準を個別に示さないなら、助言には当たりにくくなります。一方、特定の銘柄や通貨ペアの売買タイミングを示す、AIが個別に売買の判断を出す、会員登録がないと使えない個別性の高い情報を出す、といった機能は、登録が必要になる場合があります。金融庁の監督指針の考え方に沿って、機能ごとに確認します。

規約に「投資助言ではありません」と書けば足りますか。

足りません。規約の定めは、実際の機能・画面・料金の取り方と同じ内容であって初めて意味を持ちます。画面に売買の指示が出ていたり、有料の会員にだけ個別の売買時期を示していたりすれば、規約の一文では評価は変わりません。

不動産の価格診断サービスで、物件の価格を表示してもよいですか。

有料で、特定の物件について価格を金額で表示すると、不動産鑑定評価法の不動産鑑定業に当たるおそれが高くなります。「鑑定評価ではありません」と書くだけでは解消しません。参考利回りの比較で示す、価格帯の表示は有料機能と切り離す、グレーゾーン解消制度で確認する、といった設計の選択肢があります。

提携先の不動産会社から成約時に報酬を受け取ってもよいですか。

成約に連動するほど、媒介と見られやすくなります。開始時は定額の広告掲載料などにし、物件の説明や価格の交渉に運営者が関与しない旨を契約と規約に書き、診断結果の画面から特定の提携先へ誘導しない設計が必要です。宅地建物取引業の免許なしに媒介を行うと、宅地建物取引業法の罰則があります。

家計アプリで銀行口座と連携するときに、気をつける法律はありますか。

銀行から利用者の口座の情報を取得して利用者に提供する行為は、銀行法の電子決済等代行業に当たりうるため、登録の要否を確認します。自社で行うか、登録を受けた事業者のサービスを使うかを、設計の初期に決めます。融資の斡旋は貸金業法、税務書類の作成や税務相談は税理士法の問題にもなります。

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