このページの要点
- 賭博罪は偶然の勝敗で財物の得喪を争うことを処罰する(刑法185条)。全員に対価相当の商品が届く設計か、当選品を現金同然に戻す道がないかを、画面と条項の両方で確認する。
- 有料ガチャで得る商品は取引の対象そのもので景品類には当たらないが、別に景品類を出す企画には懸賞の上限がかかり、カード合わせ(コンプガチャ)は金額にかかわらず禁止される。
- 確率の表示は景品表示法5条1号(優良誤認)で問われる。抽選の確定時点、演出は結果に影響しないこと、サーバーの記録を正式な記録とすることを規約に書き、設定と履歴を保存する。
- 抽選結果による返品不可は、規約だけでなく、特定商取引法に基づく表記と申込み画面にも表示する(同法15条の3、施行規則44条)。
最初に結論:「賭博ではありません」の一文では足りない。仕組み・当選品の戻し方・景品規制・確率の表示を、一つずつ手当てする
結論
ランダムに商品が決まる販売の形は、運営者にとって分かりやすい魅力があります。結果を開ける瞬間の楽しさがあり、在庫の組合せ次第で客単価も設計できます。その反面、規約の起案を頼まれる側から見ると、他の業種の規約に比べて「法律の名前が先に出てくる」サービスです。賭博罪、富くじ罪、景品表示法の懸賞規制、カード合わせの禁止。どれも、規約の文章を整える前に、サービスの設計そのものを見直す必要がある論点です。
アトラス行政書士法人が、ランダム販売のサービスの規約とプライバシーポリシーを作成するときも、最初に聞くのは条文の案ではなく、画面の流れと商品の中身です。1回いくらで何が引けるのか、当たりと外れの価値の差はいくらか、引いた商品はどう手元に届くのか、受け取らずに別の価値へ戻せるのか。この4点が分かると、どの法律のどの条項が問題になるかがほぼ決まります。このページでは、その順番で、賭博罪との距離、当選品のポイント交換、景品表示法、抽選の公正性と確率の表示、未成年者と不正利用、通信販売としての表示を説明します。
三つの法律は、別々の問いを立てる
最初に、法律ごとに何が問われるのかを分けておきます。ここを混ぜると、「景品表示法の上限を守っているから賭博にならない」「賭博ではないから確率を書かなくてよい」といった、成り立たない整理に進んでしまいます。
条文の要点(令和8年10月時点の現行法)
- 刑法185条賭博をした者は50万円以下の罰金または科料。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは別。賭博とは、偶然の勝敗によって財物の得喪を争うことと解されている。
- 刑法186条常習として賭博をした者は3年以下の拘禁刑。賭博場を開張し、または博徒を結合して利益を図った者は3月以上5年以下の拘禁刑。2項は運営側に向かう規定。
- 刑法187条富くじを発売した者は2年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金。発売の取次ぎをした者、富くじを授受した者にも罰則がある。
- 景品表示法2条3項・4条取引に付随して提供する経済上の利益は景品類。くじの方法によるかどうかを問わない。内閣総理大臣は、景品類の最高額や総額などを制限できる。
- 景品表示法5条1号・2号商品・役務の内容や取引条件について、実際より著しく優良または有利と誤認させる表示の禁止。ガチャの提供割合の表示は、この条文で問われてきた。
- 特定商取引法15条の3通信販売の返品は、特約を広告に載せたかで分かれる。載せていれば特約どおり、載せていなければ引渡しから8日間は撤回・解除ができる。
- 民法5条・21条未成年者の法律行為は、法定代理人の同意がなければ取り消せる。行為能力者であると信じさせるために詐術を用いたときは、取り消せない。
賭博罪は運営者の設計を、景品表示法は商品の見せ方と上限を、特定商取引法は広告の書き方を問います。それぞれ別の条文で、別に守ります。
賭博罪・富くじ罪との距離:対価、偶然、財物の得喪
賭博罪は、偶然の勝敗で財物の得喪を争うことを処罰します。ガチャやくじで、利用者はお金を払い、偶然で結果が決まり、結果として手元に残る物の価値が人によって違います。ここだけを見ると、構成要素の「対価」と「偶然」はそろっているように見えます。そのため、運営者側の規約や画面の設計で、利用者が失うものと得るものの関係を整える必要が出てきます。
事務所が起案してきたランダム販売の規約では、判断の軸を次の三つに置いています。第一に、利用者が払うのは「商品の購入代金」で、どの結果になっても、払った金額に見合う商品が確実に手元に届くのか。第二に、引ける商品の価値の幅が大きく、安い商品が当たると払った額を大きく下回る「負け」の感覚が生じないか。第三に、当選した商品を、現金や現金同然のものに戻す道がないか。三つ目が、最も見落とされます。
同じ「ランダム販売」でも、設計で評価が分かれる
全員に対価相当の商品が届く
賭博罪から最も遠い設計
- どの結果でも、払った金額に見合う市場価値の商品を提供する
- 価値の幅が小さく、外れを引いても大きな損失感が生じない
- 当選品は発送のみ。現金や現金同然のものには戻せない
価値の幅が大きく、換金の道がある
賭博罪に近づく設計
- 高額商品と数十円の商品が同じ価格で抽選される
- 当選品を運営者が買い戻す、または他の利用者へ売れる
- 結果が出てから、払った額を大きく上回る・下回る価値が確定する
当選品をポイントに戻せる
ポイントの戻し方で評価が動く設計
- 戻る額が払った額に近いか、結果によってどれだけ違うかが論点
- ポイントで再び抽選できると、実質的に賭け続ける構造になる
- ポイントが現金や電子マネーに換えられないことが前提
どの型が適法かを、条文だけで決めることはできません。商品の価値の幅、換金の道、ポイントの戻り率といった事実を、規約と画面の両方で一貫させます。
規約には、「本サービスは商品の販売であり、賭博その他これに類する行為を目的として提供するものではない」という確認の条項を置くことがあります。この条項自体は、無駄ではありません。サービスの性質を利用者に示し、禁止行為や停止の根拠にもなります。しかし、この条項だけが規約に残り、画面では高額商品の当選率だけが強調され、当選品は運営者が買い戻す、という実態であれば、条項は評価を変えません。宣言の条項は、仕組みの手当てを書いた条項と対にして置きます。
サービスの性質と、利用者に示す事項の条文例
本サービスは、利用者が所定の対価を支払い、当社の定める抽選の方法により選定された商品の提供を受ける、商品の販売サービスです。
当社は、各抽選に設定した商品の内容、数量、参考価格および提供割合を、抽選の前に本サービス上に表示します。
利用者は、抽選の結果により、特定の経済的価値または利益が得られることが保証されるものではないことを、あらかじめ承諾するものとします。
当社は、当選した商品を、現金その他これに類するものと交換せず、利用者が当社以外の第三者に当選した商品を売却するための仲介も行いません。
第2項の「前に表示」と、第4項の換金しない定めは、画面とそろえて初めて意味を持ちます。画面の表示は、規約の条文と同じ内容であることを確認します。
事務所の書類では
事務所が作成したランダム販売の規約では、条項を単独で書かず、「抽選の公正性」「当選品の取扱い」「ポイント」「禁止事項」の4つの条を一組で設計しています。賭博に当たらないことを一つの条項で守るのではなく、複数の条項で守る考え方です。起案の最初に聞くのは、当選品の戻し方(ポイント交換の有無)と、価値の最大・最小の幅です。
当選品をポイントに交換できる仕組み:実質的な買戻し
オリパやオンラインガチャでよく見られる機能に、「引いた商品を発送してもらう代わりに、運営者が決めたポイントに交換できる」仕組みがあります。利用者にとっては、欲しくない商品を手元に置かずに済み、そのポイントで次の抽選に使えます。運営者にとっては、在庫の発送コストを減らせます。便利な機能ですが、法的には、当選品の実質的な買戻しです。
この仕組みでは、次の三点を確認します。まず、ポイントの交換額が、商品の市場価値と比べて、どう決められているか。交換額が商品ごとにばらつくほど、ポイントを経由して「結果として戻る額」が変動し、賭博の議論に近づきます。次に、ポイントを抽選にまた使えるかどうか。使えるなら、結果の価値が再び賭けの元手になります。最後に、ポイントを現金、電子マネー、他のサービスのポイントに換えられるか。換えられるなら、ポイントは換金の手段になります。事務所が起案した規約では、ポイントは本サービス内の指定用途に限って使え、換金・譲渡・売買はできない、と書くことを基本にしています。
当選品を引き取る・戻すときの流れと、論点が出る場所
利用者・相手方 運営者 外部の事業者・行政 問題になりやすい点
矢印の右へ進むほど、結果の価値が現金に近づきます。交換額の決め方と、ポイントの用途の限定を、規約と画面で一貫させます。
もう一つの落とし穴は、ポイントの有効期限です。事務所が起案した規約では、購入日または付与日から90日で失効するという設計が見られました。この期限の設定は、資金決済法の前払式支払手段の規制に関わります。発行の日から6か月以内に限り使えるポイントは適用除外ですが(同法4条2号、施行令4条2項)、期限を運用で延ばすと、この除外の前提が崩れます。詳しくは、アプリ内ポイント・コイン・クレジット・チケットの規約と資金決済法で説明しています。
当選品の取扱いの条項:改訂の例
ポイント交換の条文
権利放棄を一文で済ませると、利用者が何を失うか分からないまま操作できてしまいます。交換額の事前表示と、取り消せない旨の確認画面を条文に結び付けます。
ポイントの用途
用途の限定だけでは、換金の禁止が足りません。禁止する行為を具体的に並べ、停止の根拠にもなるようにします。
景品表示法:ガチャで得る商品は景品類か、くじで賞品を出すと何が制限されるか
景品表示法は、「景品類」の提供を制限する法律です。ガチャやくじで当たった商品が景品類に当たるなら、上限の制限がかかります。ところが、消費者庁のQ&Aは、有料ガチャで得るアイテム等は取引の対象そのものであり、取引に付随して提供される景品類には当たらない、と整理しています(インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&AのQ16)。有料のくじの賞品についても、正常な商慣習に照らして取引の本来の内容をなすと認められるなら、景品規制の対象にならないとしています(景品に関するQ&AのQ25)。つまり、ガチャやくじの賞品そのものは、原則として景品類ではありません。
景品規制がかかるのは、取引に付随して、別に景品類を提供する場面です。たとえば、有料ガチャを一定回数引いた利用者に特別な景品を抽選で出す、参加費を払って参加するイベントで景品を出す、といった場面です。消費者庁のQ&Aは、参加費を払って出場するマラソン大会の賞金を、参加費の取引に付随する景品類にあたる一般懸賞として整理しています(景品に関するQ&AのQ28)。ビンゴのように、参加費を払って参加するイベントで、偶然によって景品が決まる場合も、この考え方が参考になります。
一般懸賞の上限の計算例(景品に関するQ&AのQ86に基づく)
- 参加費1,000円、売上予定総額200万円最高額は取引価額の20倍=2万円。総額は売上予定総額の2%=4万円1等は2万円まで、賞品全体で4万円まで
- 参加費5,000円、売上予定総額300万円取引価額が5,000円以上なので最高額は一律10万円。総額は300万円の2%=6万円総額が先に効き、実質6万円が上限
- 参加費300円、売上予定総額100万円最高額は取引価額の20倍=6,000円。総額は100万円の2%=2万円1等は6,000円まで、賞品全体で2万円まで
計算は、景品類に当たる場合の上限です。賞品が取引の本来の内容と認められる場合は、この計算の対象にはなりません。どちらに当たるかは、サービスの設計と表示で決まります。
参加費つきのイベントを運営者と提供者が分担する形のサービスでは、景品の内容と価値を決めるのは提供者であり、運営者は場を提供する側です。事務所が起案したビンゴ型イベントのプラットフォーム規約では、提供者が景品表示法、消費者契約法、刑法(賭博罪)に違反しないことを提供者の義務とし、参加者全員に対して参加費に見合う価値を、結果に依存しない形で提供する設計を求め、過度な射幸性を持つ内容を禁止事項に入れました。上限を守る責任を提供者の側に明記し、運営者が停止できる根拠も置いておくためです。
カード合わせ(コンプガチャ)の禁止
景品表示法に基づく告示は、二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供を禁止しています(懸賞による景品類の提供に関する事項の制限の第5項)。いわゆるコンプガチャです。消費者庁のQ&Aは、有料ガチャで偶然に決まるアイテム等を提供し、異なる種類のアイテム等をそろえた利用者に別の経済上の利益を提供する場合に問題になる、と説明しています。上限の額にかかわらず、提供そのものが禁止される点が、他の懸賞と異なります。
同じ種類のアイテムを複数集めると景品が出る仕組みは、異なる種類の組合せを求めないため、カード合わせには当たらない、と整理されています。ただし、名前が「コンプ」かどうかではなく、仕組みの実質で判断されます。規約や画面に「そろえると特別な商品を差し上げます」という仕組みを入れるなら、そろえる対象が異なる種類の符票の組合せになっていないかを、最初に確認します。
抽選の公正性と、確率の表示
利用者が最も疑うのは、「本当に表示のとおりの確率で抽選されているのか」「結果を運営者が操作していないか」という点です。規約は、この疑いに先に答える役割を持ちます。事務所が起案した規約で、抽選の公正性について書くのは、おおよそ次の事項です。
抽選の公正性を規約と記録で支える
- 結果が確定する時点を書く利用者が抽選を実行し、運営者のサーバー上で処理が正常に完了した時点で結果が確定する、と定めます。通信が切れた、画面が固まったといった場合に、どの時点の結果が有効かを決めるためです。
- 演出は結果に影響しないと書く画面上のアニメーションや効果音は、体験を高めるための演出で、結果や確率に影響しない旨を書きます。演出の途中で結果が変わるという誤解を防ぎます。
- サーバーの記録を正式な記録とする抽選結果やポイントの消費履歴について、運営者のサーバーに記録されたデータを正式な記録として扱う、と定めます。利用者の端末の表示と食い違ったときの基準です。
- 結果を操作しない約束と例外を書く運営者が結果を恣意的に変更しないことを書き、同時に、システム障害や不正アクセスなどのときに、抽選を無効にしてポイントを返還する例外を置きます。例外の場面は具体的に書きます。
- 確率と封入数を事前に表示する各抽選に、対象商品、封入数、提供割合を、抽選を実行する前の画面に表示します。販売終了後に、抽選の履歴や封入の状況を公開する場合は、その旨も書きます。
条文と画面と記録の三つがそろって、公正性を説明できます。サーバーの記録の保存期間も、個人情報の保存期間とあわせて決めます。
確率の表示は、景品表示法5条1号(優良誤認)で問われます。消費者庁は、令和3年6月に、ゲーム内のガチャの提供割合の表示をめぐって、表示された提供割合どおりに抽選すれば提供される可能性のあった組合せのほとんどが、実際には提供されない仕組みだったとして、措置命令を出しました。表示の確率と実際の抽選の仕組みが一致していることが、最低限の条件です。令和6年10月施行の改正で、優良誤認と有利誤認の表示には、措置命令を経ずに適用される罰則(同法48条、100万円以下の罰金)も設けられています。
運営者の規約には、「提供割合は目安です」といった書き方を避け、「各抽選に表示した提供割合に従って、サーバー上でランダムに実施します」と、仕組みを正確に書きます。在庫の組合せを変える場合は、変更の内容を表示に反映します。確率の根拠となるデータや、抽選のプログラムの設定は、後から説明できるよう保存しておきます。
未成年者・不正利用・景品の転売:入口でどう止めるか
課金型のランダム販売で、最も相談の多い場面の一つが、未成年者の利用です。民法5条により、未成年者が法定代理人の同意なく行った契約は、原則として取り消せます。取り消されると、運営者は代金を返す一方で、すでに発送した商品の回収が難しくなります。そこで、入口で利用資格を絞る設計と、親権者の同意を前提とする設計の、どちらを採るかを最初に決めます。
未成年者への対応は、二つの設計から選ぶ
18歳以上に限定する
利用資格の段階で止める設計
- 規約で、満18歳以上の個人に限ると定める
- 登録時の年齢の確認方法を、画面で示す
- 虚偽の申告があった場合の停止と、返金しない定めを置く
親権者の同意を前提に認める
同意の確認を運営する設計
- 未成年者は法定代理人の事前の同意を得て利用する、と定める
- 年齢・同意の確認資料の提出を求められる旨を書く
- 課金や抽選の回数に上限を設ける制限措置を書く
どちらの設計でも、年齢を偽った場合の扱いを書きます。民法21条の詐術に当たるかは、事案ごとに判断されるため、規約の一文だけで取消権がなくなるとは限りません。
事務所の書類では、年齢に関する条項を、規約の「利用資格」「未成年者」「禁止事項」「停止」の4か所でそろえています。たとえば、利用資格では18歳以上に限る、未成年者の条では例外的な同意利用を認める、という食い違いが残ったままの規約を、他の案件でよく見かけます。利用者から見れば、どちらが本当の運用なのか分かりません。
不正利用への備えも、規約に書いておきます。BOTなどの自動化プログラムによる抽選、複数のアカウントの作成、アカウントの貸与や売買は、抽選の公正性を損なう行為です。抽選の対象となる商品が高額なときは、盗用したクレジットカードで購入し、商品を転売する行為も現れます。決済のチャージバックが生じた場合に、ポイントや当選品を取り消す権限、短時間に大量の決済があったときに決済を保留する権限、決済代行会社やカード会社の照会に応じて情報を提供する場合があること。これらを、停止の条と、プライバシーポリシーの第三者提供の条にそろえて書きます。提供の根拠は、アプリのプライバシーポリシーの書き方と、必須の記載事項で説明している利用目的の特定と重なります。
当選した商品の転売も、整理しておく点です。利用者が当選品をフリマアプリで売ること自体を禁止するかどうかは、運営者の方針です。ただ、換金目的の購入が増えると、サービスが「賭け」の性格を帯びやすくなります。そこで、規約には「換金その他営利を目的とした景品の取得を禁止する」と書き、継続して大量に抽選する利用を、停止の事由に入れておく例があります。利用者が出品者になる機能がある場合は、出品者の本人確認と責任の分担を、マッチング・C2Cプラットフォームの利用規約の考え方で整理します。
通信販売としての表示:返品できない旨は、広告に書く
オンラインで物品を発送して売るサービスは、特定商取引法の通信販売に当たります。抽選で決まった商品について、返品や交換に応じない場合は、その旨を広告に表示します。特定商取引法15条の3は、返品に関する特約を広告に載せたかどうかで結論を分けます。載せていれば特約のとおりになり、載せていなければ、商品の引渡しから8日間は、購入者が申込みの撤回や契約の解除をすることができます。インターネットの申込みのように電子消費者契約に当たる場合は、広告に表示するだけでなく、申込みとなる操作を行う画面でも、見やすい箇所に明瞭に表示する方法が求められます(同条1項ただし書き、施行規則44条)。
ここで規約によく見つかる誤りが二つあります。一つは、返品できない旨を規約の中にだけ書き、特定商取引法に基づく表記や申込みの画面に書いていないこと。もう一つは、通信販売にはクーリング・オフ制度がないにもかかわらず、規約に「クーリング・オフの対象外」と書き、条文の番号も合っていないことです。通信販売で定めがあるのは、返品の特約に関する15条の3です。表記の書き方は、アプリの特定商取引法に基づく表記と、課金・サブスクの規約でまとめています。
返品できないのは、抽選の結果が出たあとの話です。商品が破損していた、別の商品が届いた、というときは、返品の特約があっても、運営者の債務不履行の問題が残ります。「抽選結果に基づく商品は、返品・交換・返金に一切応じない」と書く場合も、運営者の責任による不具合は除く、と書いておきます。消費者契約法8条1項1号は、責任を全部なくしてしまう定めを無効とし、事業者の債務不履行による損害の賠償がその対象に含まれます。
公開前の点検:ランダム販売の書類がそろっているか
- 規約の「サービス内容」「抽選」「当選品」「ポイント」の4つの条が、画面の流れと同じ内容になっている
- 各抽選の画面に、対象商品、封入数、提供割合が、抽選の前に表示される
- 当選品を現金・電子マネーに戻す道がなく、ポイントの用途と、換金・譲渡の禁止が明記されている
- ポイントの有効期限と、期限を延ばさない運用が決まっている(資金決済法の適用除外を守る)
- 景品類を別に提供する企画があるときは、上限の計算と、カード合わせに当たらないことを確認した
- 利用資格(18歳以上か、同意つきか)が、規約・登録画面・停止の条でそろっている
- 返品・交換に応じない旨が、特定商取引法に基づく表記と申込み画面に表示されている
- 決済のチャージバック、BOT、複数アカウントへの対応が、停止の条とプライバシーポリシーに書かれている
ランダム販売の規約は、サービスの魅力を損なわずに、法律の線の内側に収める設計図です。仕組みを変えれば、条項も変わります。関連して、同意の取り方は利用規約の同意の取り方と、定型約款のルール、規約を公開後に直すときは利用規約の変更を参照してください。
よくあるご質問
オンラインガチャは、賭博罪に当たりますか。
一律に当たる、または当たらない、と決めることはできません。賭博罪は、偶然の勝敗で財物の得喪を争うことを処罰します。そのため、利用者が払う対価、結果の価値の幅、当選品を現金や現金同然のものに戻せるか、といった事実で評価が変わります。規約に賭博ではないと書くだけでは足りず、全員に対価相当の商品が届く設計か、当選品の買戻しの仕組みがないか、を画面と条項の両方で確認します。
ガチャで当たった商品にも、景品表示法の景品類の上限はかかりますか。
有料のガチャで得る商品は取引の対象そのものなので、原則として景品類には当たらず、上限の対象ではありません。上限がかかるのは、ガチャとは別に、取引に付随して景品類を抽選などで提供する場合です。また、異なる種類のアイテムをそろえた人に景品を提供するカード合わせは、金額にかかわらず禁止されています。
当選した商品をポイントに交換できる機能を付けてもよいですか。
付けることはできますが、実質的な買戻しになるため、交換額の決め方、ポイントを再び抽選に使えるか、換金できないか、を確認します。ポイントは本サービス内の用途に限り、換金・譲渡・売買を禁止し、交換額は抽選の画面に表示します。有効期限の設定は、資金決済法の前払式支払手段の規制にも関わります。
抽選結果による返品不可は、規約に書けば足りますか。
足りません。通信販売では、返品の特約を広告に表示しなければ、特約が優先しません。特定商取引法に基づく表記と、申込みの最終画面にも表示します。運営者の責任による不具合や、別の商品が届いた場合まで返品に応じない旨を書くと、消費者契約法8条1項の問題が出ます。
未成年者の利用は、どう扱えばよいですか。
18歳以上に限る設計と、親権者の同意を前提に認める設計の二つがあります。どちらを選んでも、利用資格、未成年者、禁止事項、停止の4か所の条項をそろえ、年齢を偽った場合の扱いを書きます。未成年者が同意なく契約したときは、民法5条により取り消せるため、決済の上限や確認方法を設けておくことも有効です。
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