このページの要点
- 有料のアプリ・Webサービスを個人にインターネットで販売するのは通信販売(事業者向けの取引は同法26条1項1号で除かれる)。広告(サービスの紹介ページ)に、価格、支払の時期と方法、提供時期、解約に関する事項などを表示する(特定商取引法11条)。
- 申込みの最終確認画面には、分量(提供期間・回数など)、価格、支払時期と方法、提供時期、申込期間、撤回・解除に関する事項を表示する(同法12条の6第1項)。
- 最終確認画面で、申込みになることや契約の内容について誤認させる表示は禁止(同条2項)。違反すると、誤認して申し込んだ人は申込みを取り消せる(同法15条の4)。
- 「いかなる理由でも返金しない」と書いても、事業者の責任による不具合まで返金を拒めるわけではない。返金しない場面とする場面を分けて書く。
特定商取引法に基づく表記に書く事項
インターネットで有料のサービスを提供する事業者は、販売条件について広告をするとき、価格、支払の時期と方法、提供時期、申込みの期間に関する定め、申込みの撤回又は解除に関する事項などを表示しなければなりません(特定商取引法11条)。アプリの紹介ページや料金ページは、この「広告」に当たります。事業者の氏名・名称、住所、電話番号、継続して契約する場合の内容なども、同法の施行規則で表示事項とされています。
| 項目 | 書き方の注意 |
|---|---|
| 販売価格 | 何に対する対価かを具体的に(ツールの利用料、情報提供の料金など)。税込で表示。プランごとに分ける |
| 追加でかかる費用 | 通信料、振込の手数料など |
| 支払の時期と方法 | 申込み時に決済、以後毎月◯日に自動決済、など。ストア課金ならストアの方法による旨 |
| 役務の提供時期 | 決済の完了後ただちに、など |
| 契約期間と自動更新 | 月額は1か月、年額は1年、解約しない限り同じ期間で自動更新される旨と金額 |
| 申込みの撤回・解約 | 解約の方法、解約の期限、期間の途中で解約した場合の返金の有無 |
| 事業者の情報 | 氏名又は名称、住所、電話番号、代表者又は責任者、メールアドレス |
| 動作環境 | 対応するOSやブラウザなど、必要に応じて |
料金ページへのリンクだけで済ませず、自動更新されること、契約期間、金額を、表記のページの中で完結させておきます。表記の内容は、利用規約の料金・解約の条(利用規約の作り方のページ)と一致させます。個人の事業者の場合、戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号が必要で、通称・屋号・サイト名だけでは足りません。一定の要件のもとで、請求があれば遅滞なく提供する旨を表示して、氏名・住所・電話番号の表示を省略する方法もあります(同法11条ただし書)。ただし、法人は登記された本店所在地や代表者が公開されているため、省略する実益は乏しく、決済代行会社の審査で電話番号の掲載を求められることもあります。バーチャルオフィスの住所を表示する場合は、確実に連絡が取れる体制が前提になります。
申込みの最終確認画面の表示(特定商取引法12条の6)
通信販売の申込みを受ける最後の画面には、次の事項を表示しなければなりません(特定商取引法12条の6第1項)。
- 提供する役務の分量(利用できる期間、回数など)
- 価格(対価)
- 支払の時期と方法
- 提供時期
- 申込みの期間に関する定めがあるときは、その内容
- 申込みの撤回又は解除に関する事項
また、その画面で、申込みになることや、これらの事項について、人を誤認させるような表示をしてはなりません(同条2項)。表示をしなかったり、事実と違う表示をしたりしたために、利用者が誤認して申し込んだ場合、利用者は申込みを取り消すことができます(同法15条の4)。
お申込み内容の確認(まだお申込みは完了していません)
プラン:スタンダードプラン(月額・自動更新)
料金:月額◯◯円(税込)。今回のお支払で、本日から翌月の同日の前日までご利用いただけます。
お支払:本日決済。以後、毎月◯日にご登録のカードで自動決済します。
提供時期:決済の完了後ただちに。
解約:次回の決済日の前日までに、設定画面から解約できます。期間の途中で解約しても、日割りの返金はありません。
利用規約 / 特定商取引法に基づく表記
上記の内容と利用規約に同意します。
上記の内容で申し込む(支払を確定する)
ボタンの文言は、押すと申込みが確定することが分かるものにします。「次へ」「確認」のような文言は、申込みになることを誤認させるおそれがあります。
最終確認画面に、利用規約などの別のページへのリンクを置いて参照させることはできます(規約への同意の取り方は同意の取り方と定型約款のページ)。ただし、参照先も申込みの画面の一部として扱われ、解約に制約があるなど重要な事項は、最終確認画面の上で明確に表示する必要があります。金額の計算の方法は、規約、表記、最終確認画面で一致させます。決済代行サービスの日割り計算の方法と規約の計算式がずれていて、画面の表示額と実際の決済額が食い違うと、誤認させる表示の問題になります。
無料体験から有料への移行
無料や割引の期間を経て有料に移行するサービスでは、いつから、いくら支払うことになるのかが、申込みの時点で分かるように表示します。「お試し」「無料体験」を強調しながら、実際には自動で有料の定期契約に移り、解約に条件がある場合は、誤認を招くおそれが強くなります。
- 課金が始まる時点を、日付の基準(登録から7日後か、8日目か)や時刻の基準まで含めて決めます。
- 無料期間の後に、どのプランに移行するのかを明記します。
- 「申込み時に課金」と「7日間無料」が同じ表記の中に並ぶと、矛盾して読めます。表記・規約・画面をそろえます。
- 無料期間中に解約すれば料金がかからないこと、解約の方法と期限を、申込みの画面に表示します。
自動更新と解約の書き方
- 解約の期限は日時で固定する:「次回の更新日の前日23時59分まで」のように書きます。システムの障害で解約の画面が使えないときは、メールでも解約できるようにした例があります。
- アプリの削除は解約ではない:アプリをアンインストールしても、アカウントを削除しても、定期購入は解約されないことがあります。規約とアプリ内の案内に明記します。
- ストアで購入したものはストアで解約:アプリストアの課金は、購入したストアの管理画面で解約します。iPhone版とAndroid版では、解約の期限の案内もストアごとに異なります(ストア審査のページ)。
- 決済に失敗したとき:決済が完了するまで提供を止め、一定の期限までに完了しなければ解約されたものとして、その期間の料金は請求しない、といったルールを決めておくと、「使えないのに料金だけ請求された」という苦情を防げます。
- 解約の取消し:解約の手続をした後、効力が生じるまでの間は取り消せるようにした例があります。再申込みで不利な条件にならないようにするためです。
「返金しません」の書き方
「デジタルサービスの性質上、理由のいかんを問わず返金しません」と書いた規約は多くあります。しかし、この書き方では、運営者の側の不具合でサービスが提供できなかった場合の法律上の解除と、それに伴う返金まで排除するように読めてしまいます。利用者の解除権を放棄させる条項(消費者契約法8条の2)や、利用者の利益を一方的に害する条項(同法10条)として、無効になるおそれがあります。
事務所の改訂例:返金・解約(依頼者原案・相手方提示案からの改訂)
| 返金の範囲 | |
|---|---|
| 改訂前いかなる理由があっても、お支払いいただいた料金は返金いたしません。 | 改訂後利用者の都合による解約の場合、支払済みの料金は返金しません。ただし、本項は、当社の債務の不履行を理由とする法令上の解除及びこれに伴う返金その他の法令上の権利を妨げるものではありません。 |
| 返金しない場面と、法律上の権利として返金が必要になる場面を分けました。 | |
| 運営者都合の終了 | |
| 改訂前当社は、いつでも本サービスを終了できます。この場合も、支払済みの料金は返金しません。 | 改訂後当社が本サービスの全部を終了する場合は、終了日の一定期間前までに通知し、終了日以後の期間に対応する利用料金を日割りで返還します。 |
| 運営者の都合で契約が終わるのに前払いの料金が戻らない構造は、不当な条項と評価されるおそれがあります。 | |
| 表記との一致 | |
| 改訂前(特商法表記の返金欄は「デジタルサービスのため返金不可」の一文のみ。規約には法令上の例外の定めがある) | 改訂後表記の返金欄にも、法令上の権利を妨げない旨と、運営者都合の終了の場合の扱いを記載する。 |
| 規約と表記の内容が違うと、どちらが本当の条件なのかが分からなくなります。 | |
なお、通信販売で商品を買った人が、返品特約の表示がない場合に、引渡しを受けた日から起算して8日以内に申込みの撤回等ができる制度(特定商取引法15条の3)は、商品と特定権利の売買が対象で、役務の提供には適用されません。アプリの利用料やWebサービスの月額料金は役務の対価なので、この制度で返金が必要になるわけではありませんが、解約と返金の扱いは表示事項であり、最終確認画面の表示のルールもかかります。
前払いのサービスと、承諾の通知
料金を先に受け取り、後でサービスを提供する通信販売では、代金を受け取った後、遅滞なくサービスを提供する場合を除き、申込みを承諾する旨などを通知する義務があります(特定商取引法13条)。回数券のように購入してもすぐに使わない形や、月額の前払いは、これに当たり得ます。事務所が作成したWebサービスの案件では、当初は解約の完了メールだけを送る予定でしたが、決済のたびに通知のメールを送る設計に改めていただきました。この通知には電話番号の記載も必要です(特定商取引法施行規則37条)。表記で電話番号を省略する方式をとる場合も、通知には記載します。電子メールで通知するには、あらかじめ申込者の承諾を得ておきます(同法13条2項)。
回数券・クレジット・チケットと資金決済法
サービスの中で使える「回数」「クレジット」「チケット」を前払いで販売すると、資金決済法の前払式支払手段に当たることがあります。発行の日から6か月以内に限って使えるものは、同法の適用が除外されます(資金決済法4条2号、同法施行令4条2項)。事務所の作成例では、1回分のプランの有効期間を6か月とした例や、付与するクレジットの有効期間を180日とした例があります。無料で配るチケットは対価がないので通常は該当しませんが、換金や有償の譲渡を禁止しておきます。
決済代行サービスの審査
クレジットカードの決済代行サービスを使うと、審査でサイトの表示が確認されます。特定商取引法に基づく表記、価格、返金の方針、連絡先、利用規約、プライバシーポリシーが掲載され、その内容が一致しているかが見られます。書類で業種を言い換えることはできません。審査の申請内容とサイトの実態が違うと、承認された後でも、決済の停止や入金の保留につながります。規約や表記は、実態をそのまま、禁止・制限されている業種に当たらない部分はそれが読み取れるように書きます。カードの明細に表示される名称も、利用者が分かるサービス名や屋号にそろえておくと、「身に覚えのない請求」と誤解されるのを防げます。
公開前のチェック:特商法表記と課金
- 表記に、価格・支払時期と方法・提供時期・契約期間と自動更新・解約と返金を、ページ内で完結させて書いた
- 最終確認画面に、分量・価格・支払時期と方法・提供時期・申込期間・解約の事項を表示した
- 申込みのボタンの文言を、申込みが確定することが分かるものにした
- 無料体験からの移行の時期と金額を、申込みの時点で表示した
- 解約の期限を日時で決め、アプリの削除は解約にならないことを案内した
- 返金しない場面と、法令上の権利として返金する場面を分けた
- 規約・表記・最終確認画面で、金額と計算方法をそろえた
- 前払いの場合の承諾の通知と、回数券・クレジットの有効期間を確認した
よくあるご質問
無料のアプリにも、特定商取引法に基づく表記は必要ですか?
完全に無料で、課金の機能がなければ、通信販売の表示は通常必要ありません。有料プラン、アプリ内課金、有料のコンテンツを販売する場合は、その販売条件について表示が必要になります。
アプリストアの課金でも、特商法表記は必要ですか?
ストアの課金でも、サービスの提供者として通信販売の表示事項がかかると考えて準備します。支払方法や返金の手続はストアの定めによる旨を書き、ストアの画面に表示されない返金の条件などは、購入の画面の注記や表記のページで示します。
最終確認画面に、利用規約へのリンクだけ置いておけば足りますか?
リンクで参照させることはできますが、分量、価格、支払時期と方法、提供時期、申込期間、解約に関する事項は、最終確認画面で表示する必要があります(特定商取引法12条の6第1項)。解約に制約がある場合などは、最終確認画面の上で明確に示します。
「返金不可」と書いてはいけないのですか?
利用者の都合による解約で返金しないこと自体は定められますが、運営者の側の不具合など、法律上の権利として返金が必要になる場面まで排除する書き方は、消費者契約法8条の2や10条で無効になるおそれがあります。返金しない場面とする場面を分けて書きます。
月額プランを日割りにしないと、問題がありますか?
日割りにするかどうかは事業者が決められます。日割りにしない場合は、そのことを表記と最終確認画面に明記します。月の途中の申込みを日割りにすると、短期の解約と再申込みを繰り返す使い方を招くこともあるので、初回の扱いとあわせて設計します。
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本ページは一般的な情報提供です。個別のサービスに必要な対応は、提供する機能、取得するデータ、課金の方法、利用者の範囲によって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたアプリ・Webサービス・SaaS・プラットフォームの利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表記、外部送信ポリシー、開発委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 個人情報保護委員会 / 総務省 / 消費者庁 特定商取引法ガイド